展示・イベント

うるおい漆展

概要
作家・主催者 京都漆器青年会
期間 2020年2月25日(火)~3月1日(日)
時間 9:00~18:00 ※最終日は17:00迄
備考 漆工芸

 

レポート

「うるおい漆展」は、京都漆器青年会に在籍している会員による展示会です。
目的は、会員の技術向上と見識を深めること。
次世代の担い手である45歳以下の個人作品を発表し、この展示を通して京漆器へ興味を持ってもらえる窓口として、平成3年から年に1回のペースで開催されています。

日本を代表する工芸品の一つ 漆器は、実は縄文時代から漆工が行われていたそうです。
綺麗に施される蒔絵(マキエ)は奈良時代に生まれ、平安時代、鎌倉時代、室町時代へと受け継がれ発展していったそうです。
私達が目にする仕上がった綺麗な作品には、
漆の木から漆樹液を取る専門 掻子(かきこ)、その漆を塗れる状態へと調合する専門店、ハケや筆を作る専門、木地師、上塗り師、蒔絵師、鏡の様な光沢の仕上がりにする磨く専門 蝋色師。。。等まだまだ専門の技術があり、作品が完成される迄には、多くの専門技術者が背景に存在します。
その一つの技に特化した、専門の方にお願いする方。
木地作りから一貫して制作される作家さんもいらっしゃいます。

出展されていた、若い蒔絵師さん。
元々 絵を描いていらっしゃったのですが、絵を平面にとどまらず、漆器はあらゆる立体物にそれが出来る。そこが漆世界の入口で、今も楽しい。と目をキラキラさせて仰っておられました。
漆の性質上、真っ白の色は出せないので、細かく割った卵の殻を、絵のサイズに合うように一枚一枚貼る作業をされます。
気の遠くなる作業に思いますが、真っ白を表現するために受け継がれてきた技術なんですね。。

別の作家さんは東京で学ばれ、京都に移り住むことで、京漆器の奥深さ。高い技術のレベルを知ったと仰せでした。


こちらは、会員の皆様がそれぞれ違う技法で仕上げた「カップ」と「トレー」
様々な技法による違いが、お値段に現れるところも知って頂けたと思います。
植物の柄は絵を描いているのではなく、直接植物に漆を塗り、その漆部をトレーに乗せ、剥がした事で盛り上がったものです。
他にも布を貼り、布柄を見せた技法もあったりと、聞けば聞くほど無限な技法が組み込まれていました。


京都漆器青年会では、伝世品の写しを制作するプロジェクトを3年前から進められています。
過去の優れた作家や職人の作品を観察・分析し、複製品を作る事で技法や材料の使い方、技術の巧みさに触れる機会となるからです。
木地の作成→下地と中塗りの工程→3年目の今回は絵付け作業の蒔絵。
京都市産業技術研究所と共同で、デジタルマイクロスコープや携帯型蛍光X線分析、3D形状測などを用いた科学的な分析データを元に、制作された作品も発表されました。

 


時代の流れでプラスチックやベークライト製品に押され、漆器も需要が低迷している現状。
漆器技術者も減少しており、後継者の育成に努めていくことは今後も続きます。
1つの作品には、受け継がれてきた数多くの伝統技術が詰まっています。美しさだけでなく、持った時の軽さも驚きます。
是非皆さまも手にして知って頂ければと思います。