展示・イベント
やまわき てるり個展「たましいのいれもの ー Container for the Soul」
- 概要
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作家・主催者 作家/やまわき てるり
主催者/Heritage Arts Kyoto Organization期間 2025年11月12日(水)~11月25日(火) 時間 9:30~18:00 備考 やまわきてるり / Yamawaki Teruri:
1989年青森県弘前市生まれ。
インドネシア・ポルトガルでの遊学を経て、2025年金沢卯辰山工芸工房修了。
主な活動に「工芸的美しさの行方―うつわ・包み・装飾」TERRADA ART COMPLEX/京都建仁寺(2023)、セラミック・シナジー展/京都市京セラ美術館(2023)、第10回 菊池ビエンナーレ展/菊池寛実美術館(2023)、個展「輝く光は深い闇、 深い闇は輝く光/ギャラリー数寄 (2024), Collect Art Fair 2025 /Somerset House London (2025) など。
■レセプションパーティー(ACK Night Out参加企画)
11月15日(土)18:30~20:30
予約不要・参加無料

レポート
陶芸家のやまわき てるりさんは、青森県弘前市のご出身。
学生時代は英語科を専攻され、卒業後は東京で一般企業に就職。退職後は語学のためにインドネシア、ポルトガルに渡り、ポルトガルで初めて土に触れた際に「ビビッ!」ときた運命的な出会いをきっかけに、4年間の海外暮らしからの帰国後、笠間陶芸大学校で本格的に陶芸を学ばれました。
幼少期に憧れたイルカショーのお姉さんとは異なる道を歩まれた、やまわきさん。
現在まで約5年半を金沢の工芸施設で制作に没頭されています。
石川県の制作が拠点ですが、今回は伊賀の信楽からも作品をお持ち頂いていますよね。
信楽に滞在制作できる有名な施設があって世界中の陶芸家が集まる場所があるんです。
そこに今年4ヶ月いたんです。日本一大きな窯があるのと、設備も整ってスタッフさんもおられるので、1人じゃ出来ないことが出来る場所です。
有名な陶芸作家さんも必ず1回はそこを通ってるみたいな。
この空間(町家)なら存分に大きな作品を作っても展示出来ると思って、この展示に向けて信楽で作ってきました。金沢で作ったのと、半分以上は新作ですね。
過去に何度か個展に来て下さった方には、この展示を見て発展を感じてくれたら嬉しいな。
関西で展示したのは初めてなので、初めての方には自己紹介的な展示になったらと思って。

作品には目があったりして命を感じます。和むというか。
インドネシアやポルトガルへ行くと結構、宗教色が強くて自分の信じている神様をみんなお持ちなんです。
海外行くと「あなたの宗教は何?」て聞かれたりした時に、「え、私もしかすると心の拠り所がないかも」と気付いたです。
日本人て「これは神木です」「これは精霊が宿ってる」とか聞くと何となく信じられるところがあって、それを今、造形化している感じです。
お家にあったなら何かホッとするとか、心の拠り所。「仲間を作ってる」が本音かもしれません。
週末は家族でランチとかイタリアやポルトガルって家族の繋がりが強いんです。
日本ではそれが希薄になりつつ、そういう所を埋める為もあるかもしれないし、なんかホッとして欲しいのがあるかな。
陶器って固いんですけど安心した、ふわっとしたものというか。優しいかたち。ていうのは目指しています。

元々、陶芸に興味を持っていた訳ではなく、旅先でたまたま触れた土にビビットきて、今がある。
出会いの直感というか、これから色んな出会いがあるでしょうから、この素材でやってみたいかも!とかあるかもしれませんよね。
逆に土しか知らないのもありますが、まずはこれで頑張ろうて思ってます。
本当は、竹とか和紙とか布とか触りたい希望はあって、そういうのが浮いてたらいいなとか、被れたらいいなとか、実際入れる作品を実は作りたくて。
そうなると陶器は割れやすいし、重いし危ないので。
10年後は違う素材でやっているかもしれないですね。
でも陶芸ってみんながハマるだけあって枠が深すぎて、まだ楽しいんですよね。
焼き終わって失敗8割とかなんで、じゃぁそれをどうしたら。とか考えてたらおばぁちゃんになってるかも(笑)
土間の作品は一部、割れてるじゃないですか。
展示を見にいらしたお客様が、てるりさんクラスだと、これは狙ってわざとしているのか、偶然なのかどっちだろ?と仰ってましたよ。さてどっちですか?
あれは失敗を成功に変えたんです。あれは工芸的な目線で言ったら伝統工芸は完璧を求められるので、美しい球体を作れてなんぼの世界だと失敗なんです。
作っている段階では綺麗な丸だったんですよ。でも時間をかけすぎて。
どんどん乾いていくと割れやすい物なので、造りの段階から亀裂が入っているのは気付いてたんです。
でももう焼くしかないと思って。重力に逆らっている形なので熱が入るとやっぱり歪む。だから窯から出した時は「だよねー!やっぱりそうなるよねー!結構大胆にいったなー(笑)」ていう。
でも仲間からは「いいじゃん。何かが生まれてるみたい」ていう意見もあって。
もうちょっと割れてたら桃太郎みたいにパカン!と、まっ二つに割れてるんですギリギリ形を保ちながら綺麗に割れてくれたので。これが正面だと思って。
普段なら出さないんですが、あれは成り立っていると思って成功に繋がった作品ですね。
写真を撮っていると感じたんですが、土間の作品は女性らしいですよね。中が割れて空洞になっているから覗き込むと子宮に繋がっている様な。先ほどのお話で、仲間を作っているというワードをを聞くと、土間の入口に子宮を連想させる母体の作品があって、室内に入っていくと仲間が点在していてストーリー性を感じます。
そうですよねー。あれはすごく女性性が強いですよね。年齢的にも家族みたいなのがいつもテーマにあるし、自分の母に対する思いとか色々あると思うんですけど、自分もお母さんになれる年齢になってくると、生まれる・生むことが自然とテーマになってくるというか。考えている事ってそこだな。
作品も結局、生むみたいな。

動物要素がありますよね
3本足とか架空なんですけどね。空想上の生き物っていう。
そこは工芸に逆らっている部分かもしれない。伝統工芸だと、兎を上手に作りました。ていう感じになっちゃうので。
あくまで1番最初に「ん?」て思ってほしい。それで興味を持って何だろこれ?って。
可愛いものは好きですけど、可愛いの一言で片付けちゃうと難しくなっちゃうので、あくまで心の拠り所という感じで。
柔らかい土の状態で、うねるこの形を作って積み重ねますよね。
途中、重力でふにゃってなる事を想定して最初は細身に作るとか計算があるんですか?
ふわっとさせたかったらオーバーに作らないと、作った段階から最大15%縮むんです。
それも想定しないといけないですし難しい。重力と熱との闘いです。
こんなのやっちゃって、今どうしよう?!ですよ(笑)
でもやっちゃったから、やれる所までやろう!みたいな。
両親はミュージシャンで今でも活動してて。逆に普通に生きて行こうと思って就職しましたけど、結局は血は争えないというか。何か表現の方向に進んじゃってますね(笑)

重いし、腰は痛くなるし、8割は失敗しちゃうし。そんな中でも続けていける原動力って何ですか?
失敗したらこの一週間は何?て思う時もあるけれど、陶芸が楽しいていうのもあります。
この春ロンドンで発表した時も、みんな作品に吸引されていくんですよね。
見た瞬間、ふふって笑顔になって何これー!みたいな。
それを見て「あ、この為にやってるのか」って。皆さんが、ふふってなる瞬間がやりがいに繋がってるかな。
音楽とか食は直接的に人を喜ばせられるから憧れはあります。
作ってる時は、もの凄く孤独で誰の為に。何の為にこんな大きいものを。て。
作ったら疲れて動けない日もあるし。でも楽しむ人がいるならまだやっていようかな。って。
この間も子供達が大勢来てくれてましたね。老若男女、境なく足を運ばれて楽しまれているご様子です。
ほんと嬉しかったです。ピュアな印象を教えてくれて。
「れをずっとやってるの?」て言われて、「そうだよ」て(笑)
こういう仕事があるんだ。大人になってもこういうのを作っていいんだ。て思ってくれたらね。
あまりお勧めはしないけど(笑)1つの選択肢にね。
アートのいい所は言語がいらない。
どの国の人でも、何歳の人でも、見てふふってなるならすごい平等。
入場無料でする場所にも意味があるし、道路から作品がたまたま見えて入って来られる。
普段から興味を持たないと、なかなかこういう物にアクセスしないし、出会わないことにはね。
最初は、何だろう?の印象で良くて。
アートにアクセスしない人がふらっと来て「へ~」ていうだけで私は嬉しいですね。
タイトル「安息器」不安や悲しみを癒し、安息を与えてくれるようなたましいのいれもの
タイトル「いしころ」転がる石のように感じた時もどっしりと落ち着いて癒してくれるような存在
タイトル「もぬけ」「もぬけの殻」のような脳みそやこころの状態の時もある、だけど大丈夫だよ、というメッセージを秘めた作品
タイトル「もぬけ – 燦々」「もぬけの殻」のような脳みそやこころの状態の時もある、だけど大丈夫だよ、というメッセージを秘めた作品
タイトル「りんご神」健康のシンボルであるりんごを携えた守り神のような存在
タイトル「その日の天使」その日その日に天使が存在する。天から舞い降りてきたような想像上の生き物。きっとどこかあたたかい場所へ導いてくれる。
タイトル「いん と やん」陰も陽も見え隠れして良い。どちらも持っているのが自然、というメッセージを込めた作品
タイトル「先導」わたしたちの身体が役目を終えた時、たましいの行く先を先導してくれる想像上の生き物たち
タイトル「たらちね」星や月の周期に左右されながら、たおやかに在る母性をテーマにした作品
タイトル「けしん」蝶々や美しい蛾が飛んでいるのを見るたびに、いなくなってしまった大切なひとのたましいが宿っているように感じることがある。そこから着想を得た作品
タイトル「輝く光は深い闇、深い闇は輝く光」光も闇も表裏一体。そんなメッセージを伝えるアンテナのような装置としての作品
タイトル「玉しい」空中に浮いている「たましい」を表現した球体の作品。それぞれのモチーフに遊び心を込めた。
タイトル「けしん – あげは(あちら)」蝶々や美しい蛾が飛んでいるのを見るたびに、いなくなってしまった大切なひとのたましいが宿っているように感じることがある。そこから着想を得た作品。釉薬を使わずに炭化焼成で景色を表現した。

ひとり(ぼっち)