展示・イベント

ヴィラ九条山での工芸レジデンス10周年

概要
作家・主催者 職人 : 赤坂武敏、カリン・アラビアン&フランク・ブレー、ヴィオレーヌ・ブレーズ、ヨアン・ブリュネル、ジャンヌ・ヴィセリアル&ジュリア・シマ、マリオン・ドラリュ 、セバスチャン・デプラ、ジョアン・デプレ、イヴ・ショリス、ゴリアト・ディエーヴル、フロール・ファルシネリ、ニナ・フラデ、蜂屋 佑季、珠寳花士、ディミトリ・リンカ&ニコラ・ピノン、トニー・ジュアノー、神郡宇敬、小嶋商店、ジョゼ・レヴィ、マクシーム・マティアス、カルル・マズロ、中川周士、中嶋健、中村光江、ミリン・グエン、ローレル・パーカー&ポール・シャマール 、エミリー・ペドロン、オレリー・ペトレル 、マルティーヌ・レイ 、フランソワ=グザヴィエ・リシャール、サンドリーヌ・ロジエ、ネリー・ソーニエ、清課堂、清水志郎、セリーヌ・シルヴェストル、オロール・ティブー、ジェラルド・ヴァトラン、ウラ・フォン・ブランデンブルク、セリーヌ・ライト、バティスト・イモネ&ヴァンサン・ジュソーム。
期間 2024年10月16日(水)~11月4日(月)
時間 9:30~18:00
備考 漆、陶芸、和紙、竹細工、彫刻、デザインなど

 

©ポリーヌ・ブラン(2023年度ヴィラ九条山レジデント)

レポート

ヴィラ九条山が2014年に工芸家向けのレジデンスプログラムを開始して、今年で10年。
海外の作家達がヴィラ九条山に夢・イマジネーション・希望・創作への熱望を持って数ヶ月間、生活をされます。
日本でリサーチを行ったり、日本のアーティストや職人に伝統工芸の技術を学んだり、コラボレーションをして作品を生み出し、縁と絆を結んでおられます。
ヴィラ九条山のレジデントとして滞在するという事は、様々な出会いを経験するという事。
10年の活動がぎっしりと詰まった展示です。


壁紙の作家、Francois-Xavier Richard.
日本で和紙の研究をし、様々な種類の紙を集めた、紙製のオルガン作品。
叩いたり回したりすると、ドレミの音階ではなく、それぞれ紙の素材が持つ音がパーカッションの様に響きます。
実際に幼稚園児の前で物語りを語りながら演奏も行ったそうです。


木の素材で彫刻を作る工芸家、Nina Fradet.
2015年に園部の京都伝統工芸大学に交換留学生で来日した時に竹に興味を持ち、昨年ヴィラ九条山に滞在をして、竹細工の技法を一生懸命に学んだそうです。
この作品は彼女が日本で制作し、ダンサーが作品の中から出てきてたり、転がしたりしてダンスとコラボレーションする事も多い作品です。


テキスタイルデザイナー、Aurore Thibout.
型染め職人の赤坂武敏さんとのコラボ衣装。フランスのレースが見受けられます。
展示のオープニングレセプションでは、慈照寺(銀閣寺)にて初代花方を務める、花士 珠寳(しゅほう)さんがこの衣装をまとってパフォーマンスされました。


和紙の照明作家、Celine Wright.
ヴィラ九条山の中庭にCelineさんの大きなサイズの作品があり、そのミニチュアとなる作品。
書家 上田普さんとのコラボ作品。


羽を使って作品を作る、Nelly Saunier.
染めずに、全て本物の羽を使用。
日本にインスピレーションを受け、鶴をモチーフにした仮面と、お花の作品。


グラフィックデザイナー、Maxime Matias.
日本に来た時に取り壊されている家に出くわし、新しく出来たプロジェクト
工芸家ではないですが、今年の春にヴィラ九条山に滞在し、廃墟についてリサーチ。
解体される前の町家や日本家屋を訪ねて、そこに住んでた方とお話をし、古い物を譲り受けている。
縁側の壁には障子の一部。そういった物を集めて記憶を続けさせることをコンセプトにしている。
室内で石を鑑賞する日本の文化、水石にも興味を持ち、床には解体される家屋の瓦の破片を使った作品が5つ。
彫刻刀を持ったことがない彼が、能面師の中村光江さんから、道具や木の彫り方を学び、瓦の断面にぴったりはまる様に作っている。


デザイナーのDimitry Hinka. 漆作家のNicolas Pinon.
10年近く一緒にコラボしている2人組。Nicolasは日本で学んだ漆の技術を使ってパリでも作品を披露している。
今回展示された漆の作品もフランスで作ったもので、熱湯を注ぐと、全体がゆっくりと赤く変色していく。フランスのコンクールで入賞もしている作品です。
変色するのは日本の伝統技術ではなく、2人が開発したもので、同じ技術を使ってウェーブ型のヒーターも作っている。
今もヴィラ九条山に滞在中で、今回は仙台まで行き、実際に漆木から採取することも実践したそうです。


美術印刷専門家のSebastien Desplat.
普段は他のアーティストや、美術家たちの本を作る為に印刷の仕事をしている。
今回彼は木版画に興味を持ち、日本語か書けない彼が、日本語で手書きをし、木版画で製本にした作品が展示されています。印刷に見えるほどの綺麗な作品。
フランスでは、ぼかしの技術がないそうです。日本独特のグラデーションの技を学び、蜂屋うちわ職店の蜂屋佑季さんと、うちわも制作。
印刷の仕事をしている彼にとって、幅が広がったそうです。


ジュエリーアーティストのMarion Delarue.
能面師 中村光江さんに彫り方を学んで、作った能面。
くしにも興味があり、滞在中は石で試みた事もあるが、石はパリンと割れることもある。
この作品は石シリーズの続きのコレクションで、木で出来たもの。
彫刻刀の持ち方から教わり、教える中村光江さんは、とても苦労したと仰ってましたが、とても綺麗な作品を展示されています。


漆作家のMartine Rey.
木工芸 中川周士さんのアトリエを訪れ、捨てられるカンナ屑の美しさに魅了されたMartine。
中川木工芸のアトリエから持ち帰ったカンナ屑を用いて、内側に漆を施したアクセサリー。


金箔貼りの美術工芸家、Manuela Paul-Caballier.
掛け軸のように展示された作品の生地は、船の帆。
京都の清課堂で技法を学び、鉄や鉛、金を貼っている。日本の書家 神郡宇敬さんとのコラボ作品。


陶芸家、Emilie Pedron.
Emilieが茶碗の土台を5個作り、それを5カ所の窯元で焼いたという面白い試み。
土を聞く。というシリーズ。
日本で陶芸のテクニックも学んでいる。


金属作家のMylinh Nguyen.
ウニをモチーフにした作品で、普段ならウニのトゲも金属で作る作家ですが、フランスからそれを作る為の機械を持参出来なかったので、展示作品は樹脂を使っている。
日本にいた時に、ひらめいた作品だそうです。
刳り貫いた内側には漆を塗り、実は和菓子を食べる様に考えられた器なのです。


アクセサリー作家のCeline Sylvestre.
日本滞在中に陶芸に興味を持ち、最近に作られたシリーズ。
嵐の空、穏やかで明るい空など、空は人の感情のように転写をする。
空の無限の表現をイメージした最初の作品である。


食のデザイナー、Flore Falcinelliと、Celine Pelce.
日本で集めたテーブルウェアが展示。
理研究家2人の思い出の対話が書かれてある。


工芸家にして研究者の、Tony Jouanneau.
自然のものを使った染色家でパリのソルボンヌ大学のラボと一緒に、ウニからの色素抽出プロセスの開発と、持続可能な織物着色プロセスを研究中。
床の間には、ウニ染めの作品と、それに用いた道具を展示。


デザイナーのJohan Brunel.
出身はフィンランド。サウナ文化に慣れ親しんでいたことから、滞在中は銭湯に興味を持ち、色んな銭湯に行かれたようです。
銭湯から出た時にリラックスタイムが出来るよう、座ると畳の香りに包まれる椅子。
畳職人・横山充さんとのコラボ作品。


造形作家のUlla von Brandenburg.
展示間際に出来た作品。
日本の妖怪に興味を持ち、滞在するヴィラ九条山から見える電柱の影や、植物。物干しのハンガーなどの風景を、妖怪っぽい世界に表現した作品。
型染め職人の赤坂武敏さんとのコラボ作品。


美術品修復に携わるアーティスト・工芸家の、Violaine Blaise.
15年以上、日本の布地について研究し、日本の印金布地(生地に接着剤を置き、その上に金を貼る織物の装飾技法)について製作技術を研究されています。
日本でも印金はメジャーじゃないので資料も少なく、研究に専念した書籍も展示されました。


吹きガラス作家の、Gerald Vatrin.
フランスで竹の素材を知り、竹について学びたいと、日本でリサーチ。
竹と自身のガラス作品とを融合させ、竹をどういう風にしたら新しい形が作れるのか。
床の間に飾られた白色のガラス作品。その周りに竹細工を施したいと、彼が理想とするプランのデッサも一緒に展示されている。


衣装デザイナーのJeanne Vicerial.
彼女は自信を、テキスタイル彫刻家と言っています。
今はテキスタイルを使った作品はなく、全て紐を使った作品。
展示されたトルソーの様な紐で覆われた作品はミシンも、のりも使っていません。全部手縫いで縫い合わせています。これには1200時間かかったそうです。
今は能面師 中村光江さんの元で、能面を制作中。ゆくゆくはこの作品の顔に能面をあてる考えである。
日本の縛りにも興味がありリサーチ中。
11月3日には作品と似た、黒色の紐で作られた衣装をダンサーがまとい、奥庭でとても素晴らしくかっこいいパフォーマンスを披露して下さいました。


革素材を使う2人のデザイナー、Karine Arabianと、Franck Blais.
元々は靴やカバンを作っていた二人組。
少しファッション業界から離れ、今は有名なブランドがカバンに使う革の廃棄素材を再利用し、アートオブジェを作って発表している。
Cartierのショーウィンドウのアクセサリーを飾る台に、彼らの作品が使われている。
姫路の白なめし(薬品を使わずに、水、塩、菜種油のみで皮をなめす手法)、革の使い方を学び、今回のテスト作品を展示。
フランスと違い、日本の革は固いらしく、色んな研究をしながら制作している。
革に漆を塗ったらどうなるか。1回塗ったところ、2回重ねたところなどのテスト後も見られる。


過去の作品から展示間際に完成された作品まで、ヴィラ九条山10周年の活動がお披露目されました。

過去もずっと生き続けている。そしてこれからのヴィラ九条山の10年も楽しみにしています。