展示・イベント

アサギ椀 ー木地師のこころをつなぐー

概要
作家・主催者 アサギ椀プロジェクトチーム(漆芸・木工)、宮下直樹(写真・動画)
期間 2019年2月5日(火)~2月19日(火)
時間 9:00-18:00
備考 アサギ椀プロジェクトチーム
【発起人】石川光治(故人 石川漆工房)/西村直木(ロクロ木地師)
【運営メンバー】石川良(石川漆工房)/堤卓也(堤淺吉漆店)/西村圭功・洋子(西村圭功漆工房)
【ロクロ木地師見習い】永井綾/上田量啓
【塗師見習い】飯島勇介/後藤久美

レポート

「アサギ椀プロジェクト」なぜ今そのプロジェクトが動き出したのか。
その背景を受け継いだ職人たちの物語が、作品と共に発表されました。

江戸時代の京都では生活食器として存在した、花鳥柄の黒塗り椀「浅葱椀」
しかし時代の変化と共に食卓に並ぶ食器も変わって行きます。
職人である木地師の故 石川光治と、ロクロ木地師 西村直木は、再び普段使いの椀として北山檜を使用した浅葱椀の復興を目指しましたが、石川氏の逝去により、その案は途切れる事となりました。

一方、塗師 西村圭功は、京都で唯一無二のロクロ木地師 西村直木の美しい技の継承を願い、圭功氏の弟子たちを直木氏に預けます。
ロクロ木地師の修行をスタートさせ、弟子たちの技術習得と独り立ちを思う気持ちから、直木氏の胸には再び浅葱椀復興がよぎるのでした。

技術の伝承。産業活動と経済とを、次の時代へ繋ぐ想い。
ロクロ木地師 西村直木さん・塗師 西村圭功さん・石川良さん・漆精製業 堤卓也さん。そして若い見習い職人たちが師のこころを受け継ぎ、立ち上がったのが「アサギ椀プロジェクト」

展示にはプロジェクトメンバーが、新生アサギ椀としての形を模索し試作した椀が並びます。
ロクロの途中段階である荒削りのもの(木地の湿度が安定するまで乾燥させる)。
木地師 西村直木×塗師 西村圭功のお椀。映像作家 宮下直樹さんによるプロジェクトメンバーのインタビュー映像も流れました。

通常、椀の材料には硬質でロクロが扱いやすいケヤキを用いるそうですが、アサギ椀は柔らかな京都北山檜を使用。そのため高いロクロ技術が求められるそうです。
完成された椀の厚みは非常に薄く、手にするととても軽くて驚きました。
口に触れる感触も優しそうです。

時代の流れで、安くて便利。安いから壊れても買い替えればいい。
それを否定する訳ではありません。低価格便利っていいですよね。
ただ、漆は漆の木からわずかに取れる樹液。その有難みだったり、メンテナンスをして繰り返し使い続けることが実は出来たり。物を大切に愛情持って使っていく気持ちなど、失いかけていた記憶を時には子供たちと一緒に、寄り添う機会になった展示に思います。