展示・イベント
セレブレーション -日本ポーランド現代美術展-
- 概要
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作家・主催者 【現代美術】アグニェシュカ・ブジェジャンスカ/ピョトル・ブヤク/マリア・ロボダ/アリツィア・ロガルスカ/ウーカシュ・スロヴィエツ 【彫刻】東影智裕 【サウンド・アート】ダニエル・コニウシュ 期間 2019年5月18日(土)~6月23日(日) 時間 9:00~18:00 備考 現代美術、彫刻、サウンド・アート
レポート
今年は、日本とポーランド国交樹立100周年の年。
その記念事業として、京都では両国のアーティスト21組による現代美術の展示が約一ヶ月にわたり開催されました。
ポーランドの国立文化機関 アダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートと、京都芸術センターが共催するこの展示は、The Terminal KYOTOにおいても、約2年前から打ち合わせをスタートさせ、会場は京都芸術センターと、ロームシアター京都、そしてThe Terminal KYOTOの三会場が同時開催。二条城では期間限定で行われました。
The Terminal KYOTOではポーランド人6名と、日本人1名のアーティストによる現代美術が繰り広げられます。
■土間・入口の間・防空壕(東影智裕)
ポーランドに1年間滞在した経験を持つ東影さん。動物の作品を中心に制作されていらっしゃいます。
土台の表面を樹脂で覆い、その表面を針先で一本一本、丹念に毛並みを表現。
極力ライトは用いずに自然光のみを好まれ、動物が森の中でひっそりと暮らす雰囲気を演出されました。
鹿の作品を横から見ると、片方は澄んだ目をした生を感じ、もう片方は目をつむり命を落とした表情にも見えます。
森で暮らす動物たちの生と死が、常に隣り合わせである様にも感じられます。
■坪庭(ダニエル・コニウシュ)
品質やこだわり、技術においてポーランドの若者たちは、あらゆる日本製に憧れを抱くそうです。
作家が日本に来日してから制作された、自動販売機の作品。
一ヶ月間、日本でリサーチをされ、至るところに自動販売機が設置してある事にとても驚いたそうです。
技術・治安の良さの表れでもありますが、同時に廃棄物の多さも作品には込められています。
■縁側(ウーカシュ・スロヴィエツ)
日本とポーランドがもつ共通点。戦争という悲劇を乗り越えてきた歴史をテーマに、
作家は半年前に広島にて、原爆犠牲者の墓地で植物を採取されました。
その植物を用いて標本にした作品。
■防空壕(ピョトル・ブヤク)
映像に映し出されている女性は、作家の93歳になる祖母。
現在、東京に住んでいる作家は、定期的にiPhoneを使って今もポーランドに住む祖母とクロスワードパズルをしてコミュニケーションをとっているそうです。
そのやり取りを映像化した作品。
最初は電話で行っていたクロスワードパズルも、今ではスカイプを用い、お祖母様は最初使いこなすのに苦戦されたでしょうね(^^)
他の会場では、違った作風の映像を展示されたそうですが、町家だからこそ、お祖母様との絆心温まる作品を展示して下さいました。
■二階和室(アグニェシュカ・ブジェジャンスカ)
打ち合わせ段階から展示場所は床の間を希望され、神秘的な床の間に置く作品を制作したい。という思いを伺いました。
人間社会に自然がどう関わっているか探求されている一面を持つ中で、今回制作された、しめ縄。
制作するにあたって、茅葺屋根で有名な京都深山まで行き学ばれました。
わらを叩き、加工し易くするところから学ばれたそうです。
形は現代的なインスピレーションによって完成された作品。
同時開催の母国ポーランドの展示でも、わらで文字を作った作品を展示されたそうです。
■二階和室(マリア・ロボダ)
畳に置かれたスーツケースから、無造作に広げられた荷物たち。
映画ゴッドファーザーにも出演していた俳優マーロン・ブランドが、京都の都ホテルに宿泊していた時に、エッセイストのトルーマン・カポーティが部屋を訪れ、その時のエピソードを、エッセイ「お山の大将」に残している。
スーツやズボン、カメラやタイプライターなどが部屋に散らかる様子。
そのシーンを元にインスピレーションした作品です。
旅するスーツケースとして、作品は会期途中にポーランドの展示へと旅立っていきました。。。
■二階茶室・天高の間(アリツィア・ロガルスカ)
二つの映像作品。
「夢見る改革」
催眠術にかけられている様子が映し出されています。
これに参加されている方々は平等を目指し、よりよい社会へと活動をする社会運動の若者たち。
催眠術にかけられた状態で、彼らが思い描く100年後の未来を語っています。
理想の未来を描く頭の中の景色には「何もない」という言葉を発する方も。
「プロニュフの歌」
田舎町の畑で、年を重ねた地元の人たちが民族衣装をまとって、古くから伝わる民謡のメロディーを歌っています。
失業者の増加、経済格差の広がり、若者が外の国で働き地元からいなくなる様子など、歌詞は現代に置き換えて作られています(替え歌)
歌う人々は切ない表情を浮かべ、苦悩が見受けられます。
歌詞は作家と、地元の年配の方々で考えられたそうです。
ポーランドは、複雑な歴史を背負いながらも、季節の移ろいに美を感じ、もののあわれを知る心。
手先が器用で丁寧な仕事は、工芸にも評価を得ているなど、ポーランドの方は日本人との共通点が多いと伺っていました。
社会的メッセージを残す作品もあり、連日多くの方にお越し頂きました。
ポーランドの作家が集結する、またとない貴重な機会でした。