展示・イベント

境界/Le Seuil  ニュイ・ブランシュKYOTO 2023

概要
作家・主催者 マルゴ・ガシ MARGOT GACHES
期間 2023年9月30日(土)~10月9日(月)
時間 9:00~18:00
備考 ■presents
オレリー・カルレ

■ゲストアーティスト
上田晋(書家)&エイジ・ジョン・インファンテ・ミツタ(Sound Artist)

レポート

写真や映像、絵、ライター等と、ビジュアルアーティストとして活動をされているマルゴ・ガシさん。
パリの日本タウンに生まれ、子供の頃から日本文化に触れて過ごしていらっしゃいました。
子供の頃から料理も好きで、初めてお小遣いで買った物は、日本料理の本だったそうですよ。
パリの美術館で葛飾北斎の浮世絵、木版画を見て少しずつ日本の美学に興味を持ち始め、その美術館に行った事はマルゴさんにとって大きなきっかけになりました。
そして2017年に初めて日本に来られ、旅を続けて来られました。
旅の中で、例えば分かりやすいものだと鳥居。
空間の間にある対立の間がある事が、日本ならではだと発見し、そういった概念の「間」に導かれ、このプロジェクトを「境界」と名付けられました。
今回の展示では、全ての写真が境界ではありませんが、マルゴさんが九州、四国、広島、長野県など旅の中でとらえた景色や、彼女の思う境界の写真。
そして町家の空間、展示方法など様々な形で「境界」を表現されています。

遠くからは一見、ブルーのペインティングされた布に見えますが、アナログなサイアノタイプの技法で、古い絹の反物に写真を写されています。

滝の裏側って、洞窟の様な所が存在しますよね。
その境目も境界とし、筆で滝のイメージを書かれています。
そして写真は、頭の中で疑似体験かのようにその世界へ導く窓口。
写真が写し出された絹の反物は、その世界へ繋げる役割であり、マルゴさんはそれも境界だといいます。
絹の反物を通して、写真の世界へ。

細長い廊下を境界とし、写真がたくさん展示された左側の和室を「陽」とすれば、
右側の天高の間には映像作品以外に何もない「陰」の空間となります。
映像作品は、ゲストアーティストとして、書道家の上田普さんと、音楽家サウンドアーティストのエイジ・ジョン・インファンテ・ミツタさんのコラボレーションです。
私たちが上田さんの展示作品を見る時、墨は乾ききった状態ですが、
半紙に墨を落とし、墨が滲み広がっていく様は制作するアーティスだけが知る時間です。
この作品が仕上がろうとする手前の段階も、マルゴさんは境界だといいます。

上田さんは過去に町家で展示して下さった事がありますが、その時も、墨が半紙に滲む様をどう様に形にして表現しようかと、作品作りにおいてとても大事にされていました。
今回、サウンドアーティストのエイジ・ジョン・インファンテ・ミツタさんと協力して、その滲む様子を音に表した作品です。
実際、半紙に墨が吸い込む音は捉えられなかったのですが、2人で案を出し合い、別の方法に切り替えて水分が吸収される音を拾う事にチャレンジされました。
捉えられた音は、上田さんが半紙に墨が滲んでいく音はきっとこんな感じなのだろうと、イメージしていた音とリンクしたそうです。
耳を澄ませば時々、プツプツというのが聞こえてきます。

白い半紙に墨を落とそうとする呼吸、筆をグッと押す、力を抜いて動かす、離す筆遣いの呼吸、そして作品が生まれようとする瞬間。
その様な呼吸をイメージした映像と、墨が染みわたっていく音、空間の空気が流れている様なサウンドを、この暗闇の空間で五感を通してお過ごし下さい。
(音に合わせた映像編集はマルゴ・ガシさんです)

しかし意識をすれば境界というものは、日本だけでなくパリにもありそうな気もしますが…。?
マルゴさん
「「間」は沢山の意味があります。フランスではこの「間」の概念が理解出来ないと思います。日本には境界の舞台が沢山ある」と。

マルゴさんは日本語がお上手な方です。
「日本文化と日本語を学んでる最中で、学ぶドアを開けている最中。知らない事と、知っている事との狭間にいます。
「今、私は境界にいる」」と仰ってました(^^)

 

今は日本を冒険中でコンセプトに沿った「間」「境界」を見つけてリンクした時は本当に嬉しく、その研究はこれからも続くのですが、
いつか南極に行って探検家と研究者と、私なりの方法で一緒にプロジェクトを作りたい。
アーティストのMy Mission👍!と教えてくれました。

展示は9日迄です。
作家マルゴさんは、午後から在朗される事が多いので是非足をお運び下さいませ。