展示・イベント

展覧会「ファルマコン:医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」

概要
作家・主催者 【キュレーション】大久保美紀【 アーティスト】Evor/florian gadenne/Anne-Sophie Yacono/Jérémy Segard/石井友人/犬丸暁/大久保美紀/田中美帆/堀園実
期間 2017年12月1日~12月23日
時間 9:00-18:00

レポート

フランス人4名と日本人5名によって行われた展示「ファルマコン」は、町家の一階二階、地下防空壕を使い行われ、同時期に大阪でも開催されました。

ファルマコンは“薬=毒”の両面的意味を持ちますが、自然環境と人との相互関係、先端医療や科学技術が人にどの様な意味を持つのかを問われています。


作家:フロリアン・ガデン

透明の膜に覆われた作品の中心部には菌類が入った器、または植物の種子と土が入ったものが設置されています。
日が経つごとにそれらは成長(培養)し、それぞれ異なる命を持った物体は、一つの空間(宇宙)の中で独立しながらも争わず、調和された世界を土間で表現されました。
また二階茶室には「バベルの塔的細胞」のドローイングが床の間に飾られました。
核や葉緑体、ミトコンドリアといった植物細胞からなる塔。
その塔には人間社会、見た目や生まれ方、呼吸方法も様々な生物達も存在しますが、遺伝子レベルでは共通している部分が多い事実が描かれています。
土間の作品や、床の間のドローイングに、“共存”という言葉が思い浮かびます。

作家:エヴォー
病院食を入善するのに使われるプレートの形を石膏で作り、絵が施された集合体の作品。
食べ物が体内で吸収されるミクロの出来事をシンボリックに、町家防空壕に美しく浮き上がりました。

作家:アンヌ=ソフィ・ヤコノ
争いの絶えない世界の中。
生き延びるすべを探し求める生命体の様を世界初公開となる約3メートルのドローイングで壁に展示されました。

作家:ジェレミー・セガール
伝染病や最新のアレルギー治療など先端医療における私達身体に起こりうる副作用などについて、研究や取り組みも行っておられるジェレミーさんは、その活動をアニメで表現されたり、芸術的アプローチを介して発表されておられます。
展示は、フランスでのアレルギーテストの模様などをジェレミーさんご本人の姿をドローイングに。

作家:石丸暁
作品の一部が焦げ、窪んだ所は断層面の様になっています。この焦げた剥がれは、紙の表面にルーペを当てて太陽光で焼き焦がせておられます。人間の皮膚が剥がれている、ただれている、レーザー治療と様々な事を連想しますが、マイナス要素だけでなく、見えないエネルギーの可能性も伺える様な気がします。

作家:大久保美紀
病気を治すための投薬や治療が時に副作用を起こす事もあり、それを普通に受け入れている現状の奇妙さ。
本来は治療に効く成分が含んでいない薬であっても、投薬された事で自分にあった薬だと“思い込みの力”で、病気が快復に向かう効果を発揮する「プラセド効果」の奇妙さ。
入っている成分を知らないで普通に服用している怖さと奇妙さ。
自分の身体に取り入れるものなのに、“知らない甘さ”“服用する事で信じる精神的効果”の奇妙さを問題提起されています。
展示の上段には「抗炎症、デトックス、関節に良い、骨粗鬆症予防・・・」など等、様々な効果が紙に書かれ、その紙がカプセルの中や、飲み薬の様な物の前に置かれています。そして下段には汚染・腐敗した様な世界。

また環境面においては、植物を家で育てても虫が寄り付かない工夫や、家の中に虫一匹が入る事さえも拒絶する現代。
やりすぎる漂白や殺菌の清潔環境において、人間と自然との距離・人間の持つ抵抗力・適応能力を失ってはいないか。
医療とエコロジーの問題は、それぞれの分野で活躍する研究者達の間でも問われている事ですが、直接私達に関わる出来事に、決して他人事では済ませられない様な気がします。
“生きる上で、様々な視点で見つめ直す大切さ”
専門領域の方達からだけでなく、芸術観点からも問題提起と発信をすることで新たな架け橋になり、1人1人の意識改革に繋がるのかもしれません。
【ファルマコン:医療とエコロジーのアートによる芸術的感化】
【作家】大久保美紀/ジェレミー・セガール/フロリアン・ガデン/堀園実/アンヌ=ソフィー・ヤコノ/エヴォー/田中美帆/石井友人/犬丸暁