展示・イベント

春望 ーshunbouー

概要
作家・主催者 方巍 Fang Wei (絵画 )/UMA (パフォーマンス )/宙宙 Chu Chu (インスタレーション )/谷川美音 Tanigawa Mine (漆芸)/山口遼太郎 Yamaguchi Ryotaro (陶芸 )
期間 2024年12月7日(土)~12月22日(日)
時間 9:30~18:00
備考 Curator:金澤韻 Kanazawa Kodama
Project Manager:増井辰一郎 Masui Shinichiro

■オープニングレセプション 12月7日土 18:30–20 :30

■キュレーター金澤韻によるクロージングトーク  12月22日日 18:30

レポート

企画者の金澤こだま様が2022年に上海で経験されたロックダウンでの辛い出来事を、個人的なものとして終わらせるのではなく、
アートを通して、社会の流れの中に位置づけられないかと考察された展示です。

2500万人の上海市民が自宅からの外出を制限され、食料調達や医療機関へのアクセスが困難になる深刻な状況。
透析治療を受けられずに亡くなった方や、精神的に追い詰められて自殺された方もおられたそうです。
金澤様自身も3週間の完全な外出禁止と、その後もマンションの敷地内のみという制限された生活を約2ヶ月間経験されました。

本展では5人の作家とコラボレーションする事で、ロックダウンという極限状態の中で人間の生活や社会のあり方について深く考察し、
その経験を共有することで多くの人々に問題提起を行い、展示タイトル「春望」に込められた希望への探求を試みとされました。


●ファンウェイ(絵画)
上海から来ました。
去年の2月に日本に来て、奈良にスタジオを持って仕事をしています。
絵は、最初からテーマを設けて書くのではなく、スケッチ書いたり、日常の中で絵を描いている間に徐々に完成していく様な感じです。
テーマもなく、何を描くかも分からないです。
根本的な構成、色彩、情緒を重んじて絵を描いています。


●谷川美音 (漆芸)
京都で活動している漆作家です。
自分と世界との対峙の仕方。自分と外の世界と、どう向き合っていくのか。どう関わっていくのか。
距離感を手で動かして制作しながら探っているような感覚があります。
自分はなんで漆を使っているのか、分かっている様で、大学で漆やってたし。
そういう所から何となく使っているものでしたが、凄く手作業のジャンルなので、手を動かし続ける事が毎日を歩んでる。
そういう安心案をもたらすというか、自分の実在を実感していく様な瞬間を持てるので、だから漆をやってるんだろな。
と、今回の展覧会を通して感じているところです。

文章の後にマルがついて、その後の余韻、余白を表現したっくて作りました。
廊下の作品は私の記憶の中の風景で、家で花を生けて飾る習慣があるんですが、その断片です。


水のイメージを持つ作品です。
春の雨をテーマにしていて、温度感であったり湿度感。植物が育っていくイメージの線のラインと色味を意識しています。


秋の雨をモチーフにしています。小雨がふるシーズンの空気の色、空の色、土の色。動きのある雨脚を形にしています。


滝をモチーフにしています。
滝が凍り始めているシーズン。動いているものが時間が止まっていく様。
その時の状況を思い出しながら作りました。


稲穂が実って、波の様になびいている風景をモチーフにした作品です。


●宙宙 Chu Chu (インスタレーション )

金澤さんの、上海でのロックダウンの話を聞いて、政府の統制で抑圧された人の思い、感情、想いはどうなっていくんだろ?それは何処にいくんだろ?
大地の循環・自然の循環のように蓄積されてエネルギーが溜まるのか?
地震や火山のようにエネルギー循環するんじゃないか?
などと考えたりした事がアイデアのきっかけになりました。
重力とか磁力。そういった空間に作用して循環するんじゃないかな。
そういう所から、身近な力である磁力を使って実験しつつ、インスタレーションを展開しました。
使っている物は、自然物。


私は今、北海道の火山のふもとで生活してるんですが、ふもとで集めた火山灰と、海で集めた漂流物で構成しています。
北海道で火山灰とか火山暦を見た時に人の骨や、動物の骨のように感じて、火山は内部から生まれるんじゃなく、地球の内部で生きてたものが、こちら側の世界で死んでいくんじゃないかな。と感じて。
私は毎朝、原子の森を歩いているんですが、北海道だと葉や木が地面に落ちても土に分解する成分が少ない為、そのまま体積してるんです。
その、ふかふかの大地を歩いてると、凄く死の上で生活しているのを感じて、この防空壕の空間は生と死をテーマにしつつ、元々この防空壕にあった瓦で海の様な、水の流れのような形を作って展示しています。


●山口遼太郎(陶芸)
山口さは、日常にあふれる小さな光、静かな場所に何かがきらっと光る場面や風景を陶芸で表現されています。
角度によって風景が変わり、見る人の想像力をかき立てる作品です。

 

「人がここに生きているという事が尊いことだな。小さい私たちですけど色々工夫して毎日を生きて、それが毎日を作っていて、それが社会に繋がっていることを本当によく表す事が出来た展覧会」と、仰る金澤さんの言葉です。
辛い経験を通しての言葉だからこそ、その重みと真実味が伝わってきます。

家族や友人との触れ合い、美しい景色、美味しい食事など日々の生活の中で、小さな工夫や喜びを見つけながら、前向きに過ごしていきたいですね。