展示・イベント

無聲誦讀 Reading Without Sound

概要
作家・主催者 劉 李杰(インスタレーション (Ceramic, Sound, Cutting sheet, lithograph))
期間 2023年8月11日(金)~8月25日(金)
時間 9:00~18:00
備考 ■経歴
1989年 中国浙江省寧波市生まれ
2012年 湖北美術学院芸術部 版画コースイラスト専攻卒業
2017年 京都精華大学大学院芸術研究科博士
前期課程芸術専攻(版画コース)修了
2020年 京都精華大学大学院芸術研究科博士後期課程単位取得退学

■個展
2018年 「IMPRESSION」117芸術センター(寧波)
2020年 「Another Garden」Gallery 恵風(京都)
2021年 「9日間雨が降り続けた」京都精華大学サテライトスペースDemachi(京都)

■グループ展
2016年 「Art book in China-abc/f 展 2016」(上海)
2017年 「Stone Letter Project 2017」(兵庫県)
2018年 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018 枯木又プロジェクト」(新潟県)
2019年 「第31回 今立現代美術紙展 春展 2019」(福井県)
2020年 「ARTISTS' FAIR KYOTO 2020」(推薦者:塩田千春)京都文化博物館別館(京都)
2022年 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2022旧枯木又分校」(新潟県)

等多数のグループ展にも参加。

レポート

町家での公募展にエントリー下さった劉さん。
経歴から、てっきり版画の作品を展示なさると思っていましたが、実際にお会いすると版画ではなく、インスタレーションで考えていると。
(…?)
お話を伺うと、防空壕では詩の一節を朗読した音を。
木枠を使ってもいいですか?と質問を受け、一階では文字を使った表現を。
(今まで木の縁は、作品を吊るす為に金具をかけるといった、そういう使い方を見てきましたが、劉さんは作品を見せる場に使おうとされている。ほほぉ。いいじゃないですか)

さて搬入日。
作品はフランスの詩人、アルチュール・ランボーの書いた「永遠」という詩の一節をテーマにした展示です。
カッティングシートを用いた文字の作品で、展示の準備が進みます。
二階では、同じく公募展から応募頂いた書家 白石雪妃さんと同じ日に搬入が行われ、劉さんと白石さんは、この日が初対面です。
白石さんは舞踊家の山田洋平さんと展示初日、二階で書のパフォーマンスをされる予定で、パフォーマンス中に流す音源はランボーの「永遠」の詩だと言うのです。
お互いの作家さんが、えーーーー!!
なんという偶然でしょう。一日限りのパフォーマンスですが、たまたま一階、防空壕、二階でランボーの詩「永遠」が偶然的なコラボレーションになったのです。
そんな驚きある搬入日だったのですが、さて劉さんの展示をご紹介させて頂きます。

■防空壕
目に映るものは何もなく、薄暗い空間でランボーの詩がフランス語・英語・中国語・日本語・韓国語で朗読した音が流れています。
読む行為で、その場所との関係性を含め、新たな意味合いを発生する。


■土間
日本語と中国語で「星のように輝いてほしい」という文字。

一番星の様にキラキラ目立つ輝きもありますが、小さくて気付かない様な星でも広く暗い夜空で頑張って毎日輝いている。
人は、自分の夢や希望に満ちた時もあれば、頑張っても実現出来ない悲しみの状況もあります。
約40個の陶器作品、白い星は「希望」。黒い星は「悲しみ」を表し、様々な状況の星が一つの空、土間に広がります。
どちらにおいても「星のように輝いてほしい」そんな想いが込められた空間です。


■見せの間
一見、展示場所ではなく見過ごしそうなガランとした空間。
この部屋には中国語の文字だけで詩を展示されています。


■喫茶ルーム
日本語、中国語、英語で表した作品は、すべて同じ一節です。
翻訳機能によって、違和感ある翻訳になっているところも。

「詩の意味を重要にしている訳ではなく、文字を記号として想像してほしい。形とか。
あと版画をやっているから印刷という概念が強くて。
「複製」同じものを何パターンも展示してみて、その量の数によって印象って変わるでしょ。版画1枚、10枚、100枚。全然印象が違ってきます。それをずっと試しています。
けど色々な素材をやっているので、言いたいのは空間的。時間的。
自分自身の経験とか、繋がる部分をつくってみたいと考えている。
言葉とか詩が一番伝えやすいけど、こうだよ。そうだよ。と直接言いたくないから、他の言語を使ってみたり。
読んでも分からないけど、それは別にOKなんです。
なんとなく、こうなんだ。こういう感じななんだ。想像してほしい」


留学して10年。最初の2年間は東京、2015年から京都に来られ、今は大阪のギャラリーで働いていらっしゃいます。
2019年、26歳の時に初めてThe Terminal KYOTOに大学の先生と来られ、凄い所だと思ったと同時に、その時はまだ自分に展示する自信がなかったそうです。
そして本当は8月11日から中国に帰省する予定でしたが、今回の公募展を見て少し迷った後、やりたいと思っていた場所だったからと、応募して下さいました。

2018年から詩を版画・アニメーション・水墨・音など、色んな形で表されています。
「いつも空間に合わせて作品を考えるので、同じ詩の言葉でも場所によって表現を変えます。
町屋はカッティングシートと朗読の音だけど、映像にする事もあるし。
なるべく空間自体の魅力を潰れない様に。
パッと見ると何もない様な感じで分からないでしょ。え、、、何もない。だけど気付いたら、あ! こういうメッセージが書いてある!
私の作品の中で、余白がすごく大事なんです。
町家を見て、ここで版画作品を出すのは存在感が強くなるし、今回はなるべく風景が潰れない様にと考えてカッティングシートがいいかな。と思って。」

詩を題材にされてますが、作品の為という訳ではなく、普段から本を読むのが好きなんですか?
「好きです。家に本がいっぱいあります。
言葉自体が面白いから作品作りのインスピレーションになる。
中国語、日本語、英語。同じ文でも翻訳によって微妙に意味が違ってくるけど、それぞれ国の文化によって解釈も違うから、その解釈が面白さだと思う。
ターミナルキョウトも色んな国の人が集まるじゃないですか。それに合わせても繋がりがあると思って、考えてこういう展示にしました。

防空壕ではランボーの詩が五か国の言葉で流れてますね。
国の文化によって解釈も違うから面白いと仰ってましたが、特に何処の国をそう思いますか?
「言葉で面白いのは特に日本語の表現。曖昧さの表現がめちゃ面白いですね」

曖昧さ。。
確かに日本の文化の一つですねぇ。
劉さんは将来コーヒー屋をしながら、アート・スペースでもあり、そして作家活動もしていたい。
場所は京都、中国、台南で。
来年3月は京都新聞の展示会場で展示があるそうなので、町家で展示されたカッティングシートとは違う表現方法で展示なさるはずです。
その可能性の展示も楽しみです。