展示・イベント

2026 盛夏のお庭と彫刻を愛でる

概要
作家・主催者 信ヶ原 良和
期間 2026年7月27日(月)~8月9日(日)
時間 9:30-18:00(最終日16:00まで)
備考 彫刻

レポート

信ヶ原良和さんにTHE TERMINAL KYOTOで展示いただくのは5年ぶりとなります。
夏本番を迎え、室内だけでなく庭や土間、そして防空壕と展示いただきました。
緑が生い茂る庭に信ヶ原さんの金属彫刻が加わることで、いつもの庭が少し違った景色に見えてくる。
硬質な素材ですが、庭の中では不思議なほど自然に馴染み、見る場所や時間によって、その印象も変わっていきました。
作品が馴染む背景には、実際に庭を計測した上で、この場所の為につくられた作品の数々や、
喫茶ルームのちゃぶ台でお茶をしながら眺める庭だからこそ、円形のちゃぶ台と、庭に設置した円形の作品とをリンクさせた工夫がありました。

「発表するんやったら、その空間に似合うことが大事」と信ヶ原さん。

彫刻を見るために庭に目を向ける。または、庭を眺めることで、そこにある彫刻に気づく。
作品だけを見るのではなく、作品が置かれたことで生まれた景色そのものを楽しむ。
今回の展示では、そんな時間を感じていただけたのではないでしょうか。
また防空壕には「暗闇の中の希望」と題した光を使った作品を展示。
盛夏の光と緑。そして防空後の幻想的な光景。
幅広い形で展開し、この場所でしか見ることのできない景色をご覧いただきました。


■信ヶ原さんとのお話

町家では5年ぶりの展示でしたが、今回は金色の作品が新鮮でした
ステンレスやったら同じ色になるから、色のアクセントをつけたいなぁ。と思って真鍮にしました。
元々、まるで川みたいに石が並べてあるから、真鍮で色を変えようと庭を見たときに思いましたねぇ。

庭からインスピレーションを受けられたんですね
そう!この展示が秋やったらしてないと思うし、夏でよかったと思ってます。
今、光が照ってきたけど、お庭はこういうのがある事で生き生きしてきて。
やらしてもらえて良かった。

新しい境地にいかれた感じですか?
うん、自分ではね!前回が5年前の梅雨の時期やったでしょ。今回は防空壕も、土間も使えたし。自分的には新しいこと出来たかな。
僕、お庭とか、お寺とか、いろんな所でやってるつもりやけど、数的にはそれほどでもないんです。
その場所に合わせて色んなことを考えられるから、今回なんかは暑い時期やったから、丸い石の所に円盤を置いてるんですけど。

防空壕では、ガラッと違う雰囲気の作品ですね。
以前、光のアートという展覧会に関わってたんですよ。その時は毎年ライティングオブジェを作ってたんです。
あの時代の防空壕の意味合いはよく分からないけど、やっぱり暗闇の中では、なにか希望を抱いてたと思うし。
だからそういう意味合いの「暗闇の中の希望」というライティングオブジェにしました。
あと、あんな広い所でライティングオブジェを展示した事がなかったんですよ。
いつもグループ展でちょこん、ちょこん。としか置いたことがなくて、作品の光が、床と壁にちょっとだけ映るだけやったんですよ。
作品は古いけれど、僕にとっては新しい・古いは考えてなくて、その場所に似合えばそれでいいと思ってるから。
今回は、全体に灯りが捕まえられて、天井まで光が届いたでしょ?!
自分のアトリエでワット数を変えながら、あの防空壕やったらこのくらいかなぁ?て考えてしてみたんですよ。

金属彫刻一筋にずっと活動されてて、若い世代の作家や、子供たちにどういう風に届いたらいいと思いますか?
子供たちが僕の作品を踏んづけても、まぁしゃーないなー。みたいに済ませられる風にしたいと思うけどね。
プサンに持って行ったやつでも、数日したら靴型がついてたから。
平面の作品を引きで見る時に、床の作品を踏むんですよ。悪気がないからそれは仕方がない事。
それをいちいち、ぐちゃぐちゃ言うんやったら、そういう作品を出さへんかったらいい。
まぁこっちのチャレンジでもあるし。
(展示終了が近くなると坪庭の作品の上には、何か小さな生き物が歩いて行った足跡の証拠が残っていました。先生はイタチかな?と)

何十年も活動されてて、心が折れそうになった時は?
折れてばっかりですよー。

じゃぁここままで続けてこられたモチベーションって何ですか?
それが溶接なんです。金属と溶接を扱うっていう。
自分のアトリエを建てた時に、一番最初に買ったのは溶接機なんです。
金属を溶接して、なんか作れるものを考えよって。
僕は新作ばっかり作ってないかけど、発表するんやったらその空間に似合うことが大事。
だから今回、奥の庭は計測に来てそれ用に全部作ったんですよ。だからすごく楽しかった。いろんな友達も見に来てくれたりして。
知り合いの病気で痩せた姿を写真で見せてもらったけど、そんなのに比べると心折れるなんて、ちっぽけな事じゃないですか。
僕にとってフォルムよりも、金属である事と、溶接でする事が一番大事だからね。
葉っぱの作品は溶接してないけど、それでも金属を使うことを一貫してるから。
みんなが心折れながらしてると思うし、大丈夫なはず(笑)!

先生の人生にとって溶接とは?
簡単な言い方をすれば、生き甲斐かな。
中学1年の時に万博がきたんですよ。班に分けて行きたい所に行ったのが面白くてねー。かなり感激して、建築って面白いなぁって。頭がよかったら建築の方に行ってたかもしれないけどね。
あの頃は幾何形体で組んだ、ほぼまん丸なドームの建築が多くて、それぐらいから幾何形体が好きになって、幾何形体に関する本とかも買ったしね。
溶接が出来るようになったから三角形を重ねていって、繋げた作品とか多いんです。
だから溶接できる内はやろうと思うし、生きていようと思う。

でも物つくりって、やっぱり発表する場所がなかったらどうしようもないしね。
材料があって、道具があって、どんどん造っていっても。そういう意味でも、やらしてもらえて嬉しいです。

「30代は単体で。40代以降になって空間全体での作品作りが大切」と書かれた記事がありましたが、きっかけがあったんですか?
僕が30歳に入った頃にバブルがはじけてたんやけど、実際はまだお金があったからコンペが多かった。
だからコンクールで見せる単体が多くて、ずっとやってたんやけど、コンペに入選したら野外に置けて空間をもらえるけど、入選しなかったら…。
コンクールも少なくなったし、そういうので動き方が変わってきたんです。
だからギャラリーとかに移るんですけど、ギャラリーでの見せ方。スポットライトを生かすとか、そっちの方に作品が移りだしたんです。
まぁ自然な成り行きちゃうかな。
コンクールが多かった時は、入選する事しか考えてなかった。どうやったら入選するんやろ?ばぁーかり思ってたから。

32、33くらいの時に入選して、その頃から野外のコンクールが多くなった。
せっかく出すんやったら野外の方が面白いと思って。野外は空間が広いでしょ。
だから作品の大きさも案外、自分の好きな大きさで造れたんですよ。だから僕は3mくらいのもので初めて入選して賞金ももらったんやけど、そういうのが今に来てるやろうね。

今回も空間全体でつくって頂きましたものね
せっかくやるんやったら面白くやってみたいと思うけど、アーティストは沢山いるからね。
どうやってオリジナリティを出せるか。
信ヶ原といったら「庭とかお寺ばっかりでやっとるな」で僕は全然いいんです。

今、69歳の先生ですけど5年後、10年後とかどうしてたいですか?
6年後やったら後期高齢者でしょ。身体が動きにくくなってきたりするじゃないですか。
でも頭が働いて、身体が動いてる限りは溶接をメインにした作品をやっていきたいと思ってます。
僕いま、非常勤講師で週2回行ってるんですけど、退職した後の不安はいっぱいあるけど、今から考えても仕方がないし、なってから考えるわ。
でも一生、溶接は続けていきたいです。