展示・イベント
Fumosense
- 概要
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作家・主催者 岡本尚子(絵画) 期間 9月11日(月)から9月24日(日) 時間 9:00~18:00 備考 モチーフ協力 : 田淵太郎
■岡本尚子 プロフィール
1979 奈良生まれ
2002 京都市立芸術大学美術学部美術科卒業
2022 個展(studio MAISON D’ART/大阪)
NACグランプリ(THAIPAGHETTI/東京)
「ギャラリーへ行こう2022」(数寄和/東京)
鋸山アートフェア(the Fish・鋸山美術館/千葉)
2018「桜en展 in OKAYAMA」(スペース・ヴェーネレ/岡山)
2017「桜en展」(ギャラリーカフェ・アーク/熊本)
2013 サイレントアクア(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)
TAGBOAT ART FES(都立産業貿易センター浜松町館/東京)
2012 個展(ギャラリーアンフェール/京都)
2011 NHK連続テレビ小説「カーネーション」絵画指導・デザイン画担当
2009 個展(アートスペース虹/京都)
2008 Zアンデパンダン展(金沢21世紀美術館ギャラリー)
2002 京都市立芸術大学卒業/修了制作展(京都市美術館/京都)
伊豆美術祭絵画公募展(伊東市観光会館/静岡)
2001 二人展(ギャラリーすずき/京都)
レポート
8月9月に展示して下さる方を町家から募集し、応募して下さった方々の最後にご紹介させて頂くのは、絵画でご活躍されている岡本尚子さんの展示です。
土間と室内ではテーマが違い、土間は「Trace」シリーズから5点の作品を展示して下さいました。
近くで見ると、細かいクレーター状になっています。実は岡本さんがあみ出した独自の技法でした。
パネルの一番下に白色の胡粉をのせ、その上に水干絵具を何層にも塗り重ねてからバーナーで焼き、洗いをかける。
そうする事で、一番下の層から上層までの積層が画面上に現れてくるというもの。
完全にはコントロール出来ない、偶然性を絵画に取り込むことを試みたシリーズです。
外見も、お話される雰囲気も、とてもおしとやかな方で、バーナーを持って作業をされる岡本さんが以外な感じですが、お話を聞くとルーツがあり腑に落ちました。
岡本さんの学生時代の専攻は彫刻科なんです。
今は絵画1本でご活躍されているのでそれも驚きでしたが、彫刻を専攻していても、好きで絵も描き、卒業制作は絵画だったそうです。
展示作品は2013年~2014年に制作されたもの。
色んな手法を考えている内に、層を重ねていき、焼いてもう一度戻すような事が出来るか色々試している内に、この技法が生まれたそうです。
「何かを書くというより、何かを重ねていく工程がこの時期は興味があったので。
痕跡みないな事に興味を持っていたんです。
自分が思ってない景色が出てくるのが面白くて。
彫刻をやっていた時に陶芸の授業もあって、焼き物って、焼いてみたら全然違う物が出来る事あるじゃないですか。
その偶然性を絵画に取り入れられないかと思って、バーナーで焼いて見たり、色々試しました。
ここに至る迄はずっと失敗もしてたんですが、色んな事をやっている内に成功例が出て来ました。」
室内の作品はシリーズが変わり、身近な存在である器をモチーフに、そこから未知なるものの視覚化へ展開を試みたもの。
その多様な見方が出来るものの象徴として、陶芸家 田淵太郎さんの器を描かれています。
室内に入り、まず初めに見て頂くのは田淵太郎さんの酒器の全貌を描いた作品です。
タイトル:UTSUWA-#1(Taro Tabuchi) 制作:2019
この酒器の一部。例えば側面の一部分をクローズアップした視点の作品が、室内へ続いていきます。
室内の作品は全て油絵となります。
近くで見ても油絵に思えない滑らかさ。技法のお話前にまずは、陶芸作家 田淵太郎さんとの事について伺いました。
このシリーズは全て田淵太郎さんの器を描かれていますが、ご縁は?
全然なかったですよ。
田淵さんの作品をお店でたまたま見て、「これを書きたいな」と思って、描いてる途中に田淵さんに連絡をして「絵画の作品にしてもいいですか?」とお伺いしました。
田淵さんは偶然に出来上がった作品形式なので、ある程度の所までは自分で意図的に出来ても、最終的にどういうのが仕上がるか、田淵さん自身も完全には分からない。
そういう偶然性とか、自然に出来上がるのが非常に面白いと思って。
それをどういう風に書くかをテーマにして始めました。
タイトル:UTSUWA-#17(Taro Tabuchi) 制作:2023
これは酒器ではなく、田淵さんの茶入れ。その蓋の一部分を描いた作品。
ガラスにヒビが入った様なリアルな透明感は、ガラス質の釉薬を使って描かれています。
タイトル:UTSUWA-#14(Taro Tabuchi) 制作:2022
入口の酒器、底の高台にできた釉溜りの部分をクローズアップし、岡本さんの視点で描かれた作品。
作品はグッとクローズアップした作品シリーズへ
引きで見た時と、距離感で物の見え方が変わってくる。という所が面白いと思って。
どういう視点で物を見るかがテーマになってきて、同じモチーフでも人によって捉え方が違ったりするので、自分なりの視点で描いてみました。
クローズアップしていくと抽象と具象が分からなくなるというか。
これだけ見たら抽象的に見えるし、でも実は具象物を描いてますよ。というのが出来ればいいかな。と思って。
土間の作品は、バーナーで焼く偶然性がキーワードになってましたが
これは色んな視点でみる、視点の面白さがテーマです。
水分をたっぷり含んだ、みずみずしい作品に見えるので油絵を聞いて更に驚きました。
この表情を出すには油絵が好ましかったんですか?
これは完全に油絵で、古典的な技法の「白亜地」と言います。
薄い綿の布を貼って、その上から白亜地という石膏に近い感じのを敷いて、その上に墨で描き、上から薄い透明な層をかけて、白と黒で書いていくんです。
薄い層を塗り重ねながら油絵具を徐々にのせていきます。
ある一定時間、乾燥してほしくないんですね。
アクリルだとどうしても乾燥してしまうので油が使いやすいんです。層が薄いので、何回も重ねている割にはすごく厚みがないと思います。薄~い層なので。じゅう何層かは重ねています。
突然ですが、岡本さんの趣味って何でしょう?
器が好きです。器が趣味で、色んな作家さんの個展に行ったりするのが趣味ですね。
ずっと器を見ていく内に、器から絵にしていきたいと思って、色んな作家さんを見てました。
で、田淵さんしかいないんじゃないか。と思って、田淵さんにお声掛けしたんです。
田淵さんの作品にすごく惚れ込んでい らっしゃるのが伝わります。
田淵さんを最初から知っていた訳ではなくて、器を見て、田淵さんを知りました。
どこを切り取っても、違う絵になる可能性があるのがとても魅力です。
たまたまお店で見つけた、衝撃的な出会いだったんですね。
土間シリーズも全然違う表情が出ますし、陶芸も窯から出したら違う物になったり。
そこが面白いと思っていて、その偶然性を形にしたいのがあったので、その繋がりで何かしら
陶芸、器関係の事と絵が繋げられないか。というのはずっとありましたね。
田淵さんの作品と出会った時に「これだったら絵に出来る。絵にしたい」と思いました。
展示を見にいらしたお客様からは「え、写真じゃないの?!」と、よく尋ねられました。
その様に見える技法と視点に驚く方が多かったです。
入口に飾られた酒器。岡本さんにとって作品のシリーズとなる、とっても大きな出会いだったんですね。