展示・イベント

Reflections on Invocation and Anima -祈りと霊性についての考察-

概要
作家・主催者 大野 公士(インスタレーション、立体作品)
期間 2024年7月27日(土)~8月18日(日)
時間 9:00~18:00
備考 ■大野 公士
1996 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了
2018まで 順天堂大学第一解剖学教室研究生
2017 文化庁在外派遣芸術家助成金にてオランダに滞在
2016~2020 オランダ・アムステルダムにて活動
現在東京在住 アートファクトリー城南島とオランダ・アムステルダム郊外のアトリエにて制作活動

■Solo Exhibitions
2024 Reflectios on Invocation and Anima−祈りと霊性についての考察−(The Terminal KYOTO, 京都)
2023 Le visible et l’invisible見えるものと見えざるもの −三種の神器のナラティヴ−(ギャラリーYORI,東京)
2022-23 identification (岩崎ミュージアム, 横浜)
2021 Reflections on Mass and Prayer (SYP Gallery, 東京)
2018 Introspection (Wilfrid Israel Museum, イスラエル)
2016 neural network(岩崎ミュージアム, 横浜)

■Monument
2023 Butterfly effect -Homage to Paula Kouwenhoven-(Hortus Oculus視覚障害者のガーデン、デルフト、オランダ)
2020 75th Freedom monument –Relational Connection- (Hortus Oculus, 視覚障害者のための彫刻ガーデン、デルフト、オランダ)
2018 the elephant (デルフト工科大学学会創立 150周年記念モニュメント、デルフト、オランダ)
In the beginning was the Word(Hortus Oculus, 視覚障害者のための彫刻ガーデン、デルフト、オランダ)
2017 regeneretive cells(デルフト工科大学創立 175周年記念モニュメント、デルフト、オランダ)
   Human memory(LADプロジェクト, Midden-Delfland)

■Biennale/Art Festival
2023年さいたま国際芸術祭2023 市民プロジェクトArtChari(さいたま市、埼玉)
銀座蔦屋書店アートラウンジ(銀座、東京)
2020 富士の山ビエンナーレ 2020 (富士、富士宮 日本)
2019 ヴェネチアビエンナーレ2019 ヨーロピアンカルチュラルセンター企画PERSONAL STRUCTURES (ヴェネチア イタリア)
六甲ミーツアート芸術散歩 2019、オーディエンス大賞 (六甲 日本)
2015 Yansan Biennale ジョグジャカルタ XIII(ジョグジャカルタ インドネシア)

■Art Fair
2024 Art Fair 東京2024 (国際フォーラム、東京)
2023 Focus Art Fair New York 2023 (チェルシー・インダストリアル、ニューヨーク)
   Art Osaka 2023 (中之島公会堂、大阪)
2022 Focus Art Fair Paris 2022 (カルーセル・ドゥ・ルーブル パリ)
   Art Asia Fukuoka 2022(福岡)
2019 Art Basel VOLTA 2019 (バーゼル スイス)
Kunst RAI 2019(アムステルダム オランダ)
2017 Kunst RAI 2017(アムステルダム オランダ)

■Exhibitions
2022 Gauzenmaand 2022 (フラールディンゲン美術館、デルフト、ロッテルダム、スキダム オランダ)
2021 東京都美術館セレクション展2021 (東京、日本)
2020 Geuzenmaand 2020 (フラールディンゲン美術館, オランダ)
2018 Fellow ship of Man (Tehcnohoros art Gallery, アテネ ギリシャ)

レポート

東京の下町で生まれ、現在は日本とオランダを拠点に活動されている大野さん。
表現についての重要な概念は、「存在についての考察」と「死生観について」
これらの概念が世界とどのように関係しているのかを考察し、分析をする。
美大卒業後は、芸術家として本格的に活動を始め、木彫作家としてのキャリアを確立。
技術的なスキルを磨いただけでなく、医科大学の解剖学研究室に入学を認められた後、徹底的に人体の構造も研究され、解剖学と美術の関係について研究を続けてこられています。

■今回の展示テーマについて
人間の死生観。生きてる死んでるの霊と、今の自分の立ち位置を比べてどう見えるか。
をいつもテーマにしてるんです。
そこから枝葉が分かれて、その場その場所で、今回はメインに何を肉付けできるかな。
今回はこれだけの文化が残った京都という事と、あと2、3日終戦が長ければ原爆が落とされていたかもしれない。
それが二階茶室の床の間の作品、B29なんですけど、原爆を落とすように改造された機体がプラモデルで売ってて作れちゃうんですよね。
天井が高い部屋に、最終的な救済として比叡山のライボーズをイメージして作ったんです。

■二階 天高横の間

この作品が実は、今回の一番の肝になる作品です。会期もお盆の時期で、京都でやる意味をとらえて。
左の飛行機は、大戦中に開発された日本軍の特攻兵器人間爆弾の「桜花」なんです。
今年このモデルの、この大きさのプラモデルを出したのがウクライナのメーカーなんですよ。
今、戦争をやっているウクライナが人間爆弾のプラモデルを新製品で作るって、どういう経緯でとか、いろいろ考える事が沢山あって。
調べると比叡山の延暦寺の横に、これのカタパルトの発射台作ってたんです。そのカタパルトが用済みになったんで、それをばらして叡山ドライブウェイの材料にしたんです。
そういう歴史の中で街ごと残ってキープされてるんですよね。

右の飛行機は、戦後に音速実験機として開発された「Bell x-1」
「桜花」を設計した三木忠直さんという技師は、戦後は初代新幹線の設計をされるんです。新幹線の花形設計士なんですけど、戦争が嫌で自分が「桜花」の設計をした事をずっと伏せてたんです。
でもニュースで自分が開発した「桜花」と全く同じシステムで音速を超える実験機として平和利用された事に凄く嬉しかったそうです。
「技術転用は全然いい。平和のために使ってもらって嬉しかった」という話なんですけど、同じ開発・設計だけど使われ方が全然違う。
それに付随して関わった飛行機を選んで、町家の中で展示しています。


■プラスチックの飛行機作品

コピー機は2021年コロナ真っただ中の時に「A4」がテーマにした、ある展示があった時に生まれた作品です。
今回の展示では戦争との絡みで、しkドイツが一番沢山作った飛行機や、ドイツの都市を空爆したアメリカの飛行機、ドイツが開発したミサイルなど、コピーされる物だったり、量産される物だったりを絡めて展示しています。

プラモデルって兵器産業と密接なんですよね。
戦闘機とか戦車とか。僕も小さい頃も、今もプラモデル好きですけど、イスラエルで仕事した時に戦争物のプラモデルがメンタル的に上手く作れなくなったんです。
B29とかもアメリカの親子がXmasプレゼントに知らないで子供に送たら、中に広島型と長崎型の原爆が入ってたりとか。
色んな事を考えてプラスチックって大気汚染の原因にもなる素材だから、木と違って厄介に残るんです。
人間が作ったプラスチックで人間が作った武器で、おもちゃの戦闘機を泡のように浄化させていく。バブルで消えていくというのがメインの流れです。


■防空壕西

結構、可愛いのを選んだんですが1950年代、一番最初の三種の神器なんですよ。。
アメリカが軍服を作るのに日本の工場に大量発注して、それがきっかけで景気が良くなるんですけど、割と日本はアメリカの戦争に引っ張ってもらって景気いいんですけど、それで皆が買った冷蔵庫やテレビが三種の神器。ていう天皇の秘宝をベースにそれをパロディーにして売る。ていう感覚がちょっと皮肉だぞ。と思って。
同じ時期にチャールズが戴冠して、あっちは王冠など博物館で見せるけど、日本は真逆で絶対に見せない。そんな文化のギャップありますよね。
冷蔵庫やテレビの中に武器が入ってるんですけど、あれは全部ステルス兵器で、レーダーに映らないように開発されたものなんです。
だから「見えてません」みたいな。
エリザベス女王だって散々アーティストからいじられてきたわけだけど、どうもこの国の天皇制の立ち位置は難しそうだな。って。
真向から社会活動するんだったら政治家になった方がよくて。でも僕はそっちの方向じゃないので、なんかみんなが天皇制ってどうなんだろね?てちょっと考えるキッカケになれば面白いかな。と思って。

防空壕にあれを置くのは、ちょっとね、皮肉だけどやってみようかと(笑)

地下から始まって、上まできてライボーズで救済される。ていう体内巡りみないなのを、この町家1つの建物の中で完結出来ないかな。と思って。

地下の十字架もキリスト概念に対してのアプローチなんですけどね。


■木の彫刻作品

素材はクスノキで、中は刳り貫いてあるし、虫にも食われないので大事に持てば1000年持つんです。
僕が学生だった頃はブロンズとか大理石とか、大きくて重くて固いものが偉いみたいな。
でも僕はそういうのがあまり好きじゃなかったんです。
空っぽなんだけど立体とか、重さを感じさせない物とか。そういう方向で何か作れないか?というのがずっとあったので、今もそれは続けていまて。

タトゥーは調べていくと民俗学的に奥が深いんですよ。宗教概念と民族とか。
大体昔の人のタトゥーって、霊とアニマと深く関わっていて、死んだ後の身体と、霊が見分けられるようにとか、自分の彫った刺青が光って冥途の道を照らして成仏できる様にとかヒストリーがあったり。
ボディに彫ってある透かし彫りは大体、伝統民族のタトゥーからモチーフを引っ張ってきてアレンジしています。
ここ5年くらいで難しい時代に変わってきて、伝統民族じゃない僕がタトゥーをそのまま僕が彫ると、文化を盗んだとかになり兼ねない。
どこどこのタトゥーとはしないで、ベースの植物や動物の模様をイメージして、あえて唐草模様みたいにしている。

魂と肉体の距離を計る。
大体においてそれがベースにあって、作品展開しているんです。

土間では、魂の象徴を緻密な絹糸で対比させ、空間構成を生み出されています。


■絹糸の作品

無数に編まれた絹糸。仏教における来迎図を立体空間に図像として模式化した作品。
あれは脳の中を可視化する仕事。ていうイメージでやっていて、絹糸を結んでいく法則はAIのコンピューターの方程式と同じ。
結局今の人工頭脳みたいな、脳と自意識がどうリンクするのか。
実は裏側のコンセプトなんです。


■木工の作品、どうやって制作されてるんですか?

最初に身体を彫って、ある程度大きな穴をあけて、あけた所からドリルでどんどんほじくり変える感じで。
その後、丸い刃で裏をぐーる、ぐーる回しながら広げていって。
そろそろ皮膚だぞぉ。て薄くなってきたところで止める。それを永遠に繰り返すんです。


■オランダにもアトリエがあって拠点にされてますが、オランダが肌にあったんですか?
解剖学も興味あってやってましたし、ミケランジェロの本物をやっぱり見ないと。と思って28歳の時に見に行ったんです。
一ヶ月バックパックでイタリア周ってた途中、オランダに友達がいて3日間オランダに行ったら、そこではまったんですよね。
オランダのパンチ力にやられて、ここで自分の作品と勝負したらどうなるんだろ?と思って。
何とかしてオランダで仕事がしたいと思って通うようになって、オーナーを紹介してもらって2006年から本格的にオランダに入りました。
ゲイ・レズビアンに対しても人種的にも差別がないところも凄くオープンマインドで。
日本と真逆みたいなところあって、どっぷりはまりましたね。
オランダでとても良くしてくれた縁があって、その人のお陰でモチベーション切らさずに作らせてもらえた。多分自分一人じゃ無理だったと思いますね。
学生の頃、元々成績がよくなかったし、だから今も続けている事に昔の友人は驚きいていますよ。
作品作りは楽しいですね。楽しいというか、病気(笑)なんだかんだ30年やってるので。

 

この夏 酷暑の中、絹糸の作品は数日間かけて全て町家で編まれた空間インスタレーションです。
京都のように歴史と伝統が豊富な場所でお盆も重なり、戦争の影響や原爆というテーマを取り入れ、生と死、霊と現実、歴史と文化の交錯を視覚芸術や展示において、戦争と平和の対比を繰り広げて下さいました。
今後の大野さん、10月にはロンドンのサーチギャラリーでアートフェアに参加予定です。