展示・イベント

「未来の花見:台湾ハウス」 京都展

概要
作家・主催者 【デザインクリエイター】張家翎(チャーリン・チャン) 【ビジュアルアーティスト】劉 文瑄(ミア・リュウ) 【アーティスト・クリエイティブディレクター】顏宏安(アン・イエン) 【ジュエリーデザイナー】Melted potato(メルテッド・ポテト) 【ディレクター】廖 浩哲(リャオ・ハオズ) 【ファッションデザイナー】ANGUS CHIANG(アングス・ジャン) 【プロダクトデザイナー 】無氏製作 PiliWu-Design( ピリ・ウー・デザイン) 【ディレクター】究方社 JOEFANGSTUDIO(ジョウ・ファン・スタジオ)
期間 2021年10月23日(土)~11月7日(日)
時間 10:00~18:00
備考 主催|経済部工業局
実施|台湾デザイン研究院
協力|財団法人文化台湾基金会、公益財団法人日本デザイン振興会
キュレーター|Plan
アドバイザー|method


レポート

台湾経済部工業局、台湾デザイン研究院(所在地: 台北市)による、台湾デザインの祭典「未来の花見:台湾ハウス」は10月上旬 東京展に続き、巡回展The Terminal KYOTOで開催されました。
このイベントの母体「台湾ナウ」は、オリンピックの選手達に祝福する意味で花をテーマにし、そのコンセプトを引継ぎながら、コロナ禍で更に深まった日本と台湾との友情を「花」というモチーフで表現し、来年こそは台湾と日本の人々が仲良く花見をしましょうという願いを込め、未来の花見と題されています。

約10年の間で、国の制作にもデザイン思考が導入され、様々なデザイン研究院の活動がある台湾。
台湾で最も注目を集める8人のクリエイターが、毎年10マンtも回収される廃棄ガラスを新しい命へと、サスティナブルで再生可能な再生ガラスを駆使して作品を発表されました。
全体のキュレーションは、台湾の企画会社「Plan b」と、キュレーションファーム「Double-Grass)がタッグを組み構成。
台湾から多様なデザインを届けたい。町家で開かれた日本と台湾との文化の共演をご紹介させて頂きます。

入口土間には台湾茶香水ブランドが、桃園国際空港のために開発したオリジナルのアロマの香りでお客様をお出迎えします。
旅行客が台湾の空港に降り立った時、最初に国のイメージを香りで感じて頂き、お客様を香りでもてなす為に作られたものでした。
しかしせっかく開発されたものの、残念ながらコロナ禍で世界中の人々が旅をする事を禁じられてしまい、実際にはまだ空港で使用されていません。
今回の展示にて、この香りが初お披露目となりました。
台湾ヒノキ、スギなどで自然豊かな島国の森林を表現し、お茶を楽しむ文化の象徴としてお茶の香りをアクセントに入れた香りです。
今後は、桃園国際空港で使用される予定です。
香りには、深い記憶に繋げる力があるとされています。この展示に来られた方がいつか台湾空港に降り立った時に、あ・・。と香りを通して展示を思い出して頂けたなら嬉しいですね。

まず入口に入ると、そこは台湾の東エリアです。
熱帯で、切り立っている岩石海岸は東部ならではの海岸風景が見られるところです。
作家【プロダクトデザイナー 】無氏製作 PiliWu-Design( ピリ・ウー・デザイン)
【ディレクター】廖 浩哲(リャオ・ハオズ)
【ファッションデザイナー】ANGUS CHIANG(アングス・ジャン)

東の、大理石や岩石があるエリア。
そのゴツゴツした岩を、リャオ・ハオズがアルミ合金を使って什器を作成されました。
アルミ合金は廃棄物ではないですが、非常に長く使えることから環境にも不可が低いとされ、台の高さは台湾の高い海抜を象徴しています。
岩の上には、台湾で有名なタピオカミルクティーを飲むストローを、ピリ・ウーが再生ガラスで制作。
赤と白は、台湾でよく使用される配色で、このストローをまとめて置いた事で東エリアに生殖するサンゴを表しています。
2000年以降はドリンクスタンド産業が盛んになり、膨大なプラスチック製のストローやカップなどを使用します。
海にはプラスチック製品のゴミが沢山捨てられ、サンゴが危機に瀕している現状を、ピリ・ウーはストロー作品の皮肉を交え、もう一度太平洋に綺麗な海とサンゴを取り戻そうと呼びかけています。
マイ箸の様に、ガラスで出来たマイストローを持ち歩く人も台湾にはいらっしゃるそうですよ。

ファッションデザイナーのアングス・ジャンは、青い空・白い雲・わすれ草の花が咲く東エリアの風景を毛糸で作成。
穴が空いている所には「かたおしガラス」と言われる窓の装飾がはめ込んであり、台湾の民家でよく使われているそうです。これを今回再生ガラスで制作されました。
かたおしガラスと言えば、花柄が主流のようです。自然に咲く花と、ガラスの花を一つのイメージにしてデザインされました。
実は作家のブランドイニシャルが隠れている、かたおしガラスの花模様もあるそうですよ。


町家に入ると、温帯気候の中央山脈エリアです。
作家【ジュエリーデザイナー】Melted potato(メルテッド・ポテト)

実際に台湾から運んできた龍伯(リュウハク)の木で、森の香りが漂う什器をデザイン。
高い山々が存在し、このエリアにしか咲かない花や植物を再生ガラスで制作しています。
今の技術は再生ガラスでも、透明感のあるガラスに生まれ変わる事が出来るそうです。
型、銀メッキ、カラーリングなどの工程を行い、手法を少し変えながら作品にユニーク性をもたらしています。
メタリック調の所は、車の板金技術と同じ手法。


作家【クリエイティブディレクター】究方社JOEFANGSTUDIOの、方序中(ジョー・ファン)

中央山脈の隣は、西エリアです。
そこは人口が多く産業が密集しています。と同時に、プラスチックなどの廃棄物も多く排出されるエリアでもあります。
什器は、廃棄物をアップデートする事に力を入れている台湾の小智研発 (MINIWIZ)が、麦の殻と、廃プラスチックで開発したものです。

黒色のガラス作品が、ジョー・ファンの作品です。
新型コロナウイルスにより何処の入口でも消毒液が設置される今。この先も消毒液は手放せない物になるでしょう。
素っ気ない白色の容器に入った消毒液。そこでジョーは生活の一部になるのだからと、お洒落でキレイな物を使ってはどうかと、再生ガラスで持続性可能な容器「スプレーボトル」を発表しています。
廃棄ガラスを溶かして作業を行う過程も作品化にし、流れているようなデザインは持続性可能な生命力を表現しています。
自然に流れ落ちる液体状態のガラスを一瞬で固めているそうです。
廃棄物から再生するプロセスを軸に、新型コロナウイルスの発生により、そのニーズから考えられた作品です。


作家【ビジュアルアーティスト】劉 文瑄(ミア・リュウ)

床の間はミア・リューの、ドローイングです。
台湾と日本の文化には盆栽あり、枝葉や器などそれら全てのバランスにより美しさが存在します。
ミアは細い線のようなガラス管を作り、それを枝にくくりつけて植物でありながら、一つの絵でもあると言っています。
植物の成長と、枝に留めたガラス管は、自然物と人工的な物との対話であり、共存の場である事をドローイングで発表されました。


作家【デザインクリエイター】張家翎(チャーリン・チャン)

自然との付き合い方をよく考えていた。というチャーリン・チャン。
自然から受け取ったインスピレーションを、今回は台湾西エリアにある湿地帯に生殖する小さな植物たちを、様々な形で再生ガラスを使い制作されました。
湿地帯は平たんの為、西から外来文化が入って来たそうです。その様な文化が交じり合う所として、東京展では来客者との交流をとる意味を込めて、窓辺に並んでいたそうです。
町家では庭に置かれた事で「作品が本来ある場所に戻ってきた」と、チャーリン・チャンは言っています。


作家【アーティスト・クリエイティブディレクター】顏宏安(アン・イエン)

台湾の森と光をモチーフに、ガラス超しから通る光と木の影を表現しています。
空間は自然と繋がっているとメッセージを残しています。


寺院が多く建つ、台南(タイナン)地方を表しています。
神棚などの装飾品や、僧侶の着物などに沢山の刺繍が施され、刺繍が有名な所です。
今回の8人のアーティストではないのですが、伝統刺繍を守り、広めようとファッションデザイナーや映像監督などと連携し、刺繍に新しい命を吹き込む活動をされている刺繍職人のリンさんが、展示に向けて「苔」を作成されました。
キラキラと輝くピンクや緑の鮮やかな糸が施され、台南地方の町を想像する事が出来ます。


アーティスト達の作品以外にも、台湾が10数年前から実施している環境への配慮や、政府とアーティストが一緒に取り組んでいる活動などをパネルで紹介されました。その一部のご紹介です。

小中学校を中心に、学校の環境を綺麗にしよと「美を学び、美学を見る」学校の改造計画。
そこにデザイナーに入ってもらい、新しいリノベーションの提案を実施。
学校や駅、公園などにもアートを取り入れ、幼い頃からアートに触れる環境造りをされています。

工事現場は普通、大きなシートをまとい一般の人が入れない様クローズにしていますが、労働者がランチする所を綺麗にして、一般の人が入れるように開放。
コミュニケーションがとれる事や、何を使い何をしているか現場の一部を見せるオープンスペース「工家美術館」を実施。

パイナップルを使ったお菓子は有名ですが、作る過程で大量の皮が廃棄物となります。
捨てるにもお金がかかる時代。廃棄物の皮を再利用したトレー作りです。

5,6年前の大統領選挙の時、1人の候補者は自身の顔写真をポスターに使わず、デザイナーに頼んでキービジュアルを作りました。
候補者達の顔写真のポスターが並ぶ中、たった1名キービジュアルのボスターが斬新で話題になったそうです。
このキービジュアルを使うと、名刺やグッズなど利便性が高くなります。
非常に注目をあび、若い人達からもイメージアップ。今では選挙でデザイナーが起用されているそうです。

病院の敷地以外、例えば公園でも病室を素早く作れる様にパネルにしてモジュール化し、
48時間内で陰圧病室を1室作れるようにした「組立型病室 MAC Ward」
このアイデアが、コロナ禍で労働者を集める労力を軽減させ、コロナ病室にも適応し、大変役立ったそうです。
驚いたのが、素材を医療機関の廃棄物から作っている事。
コロナ禍で海外から物を輸入する事が厳しい中、現地で調達出来るシステムは画期的です。

 

これらは、ほんの一部の紹介ですが、
新型コロナウイルスの流行により誕生した、組み立て式病室や、防疫対策の速さなど、時代に応じるパワー。
持続可能なデザイン。
デザインをとり入れた社会への応用。
政策にデザイン思考を取り入れた多様性。
デザイナー個人が色んな場で活躍できる動きをされています。
展示作品のキーワードになった「再生ガラス」リサイクル可能なデザインの取り組みなど、
展示を通して町家から配信出来た事を嬉しく思います。

展示にご参加頂いたアーティスト達は、コロナ禍で残念ながら来日する事が出来ず、オンラインでしか確認する事が出来ませんでした。
自然をモチーフにした作品が多く、風が通る町家。庭がある町家で、本来作品があるべき場所で展示出来た事を喜んでくれているそうです。
渡航が出来るようになったら必ず町家を訪れたいと仰っておられ、私達もそれを待ち望んでいます。