展示・イベント

お茶漬けと煎茶・珈琲懐石の会

概要
作家・主催者 漆芸家 土井宏友
期間 2020年1月19日(日)・20日(月)
時間 ■1月19日(日)11:00~13:30/15:30~18:00
■1月20日(月)11:00~13:30
各回定員5名 参加費¥3,500
備考 ■土井宏友

■経歴
1967年 京都で手描き友禅の家に生まれる
1987年 嵯峨美術短期大学(日本画専攻)卒業
    第19回日展(日本画)入選
    文化財修復の仕事に従事(主に漆関係の修復)
1988年 日本画21世紀展 入選
    漆を使った立体作品、器の制作を始める
1989年 青垣2001日本画点 入選
1991年 京都美術展(平面優秀賞)
1993年 立体小品展(京都ギャラリー マロニエにて漆、和釘、流木を使った作品)
    石川県輪島漆芸研究所(髹漆科)入所(~96)
    木地ロクロを北山忠孝氏に習う
1995年 「鉢・100本展」西武池袋店
1996年 京都に仕事場を移す
1998年 第11回 上野の森美術館大賞展 入選(日本画)
    漆を中心に「木地作り」から「上塗り」「漆絵」まで一貫制作
    全国各地のギャラリーで個展、グループ展を中心に活動中
2012年 漆による「珈琲道具」制作を開始する
2016年 アーティスト鈴鹿芳康氏に煎茶を習い、個展の時の表現の一つとして「煎茶と珈琲の会」を始める


 

レポート

町家の展示で今までに何度も出展頂いている漆芸家の土井宏友さん。
学生時代には日本画を専攻され、卒業後は文化財の修復にも携われています。
卒業から約10年後、漆を使った立体作品の制作をスタートされ、石川県輪島では漆の修行で木地ロクロも学ばれました。
生地作りから、上塗り、漆絵と全ての工程をお一人で手掛ける土井さん。
物作りの作家として大変ご活躍されています。
土井さん、実は珈琲マニアの顔もお持ちです。飲む専門のマニアレベルではなく、美味しく珈琲を入れる為の探求心から、ついには珈琲道具までをも、生地作りをした漆作品で作り上げられるのですから。
軽くて持ちやすく、ひたすらに美味を求めて一つ一つ細部にわたり計算された道具の数々。
食通でもある土井さんが今回、厳選した食と共に、煎茶・珈琲を美味しく味わって頂くおもてなしを、独自のスタイルで開催されました。
お客様はカップやお皿、お箸など土井さんの作品でお召し上がれる贅沢な内容です。

■「お茶漬け」
胃に負担をかけない為に、最初はお茶漬けから始まります。
トビウオの出汁で頂く、お茶漬け。この出汁をお茶に足すことで奥行のある味になるそうです。
サイホンでひいたお出汁の、何ともいい匂いが部屋に広がります。
お米は、土井さんが作られている京都南丹市八木産「キヌヒカリ」。
ぶぶあられと、海苔代わりには甜茶(てんちゃ)をのせて。
お茶の葉を山椒で炊いた佃煮と一緒にお召し上がり頂きます。
お出汁と甜茶のハーモニーが最高で「食べ終わりたくないなー」の声も聞こえていました。
その間、土井さんはお口直し用に嵐山吉兆のほうじ茶を、焙烙を使って焙じ、今度は香ばしい匂いが漂いました。


■「煎茶手前」
ままごとの様に小さなお道具が並びます。
土井さんのお点前は小川流。お医者さんが衛生的な配慮を組み込んで考案された流派で、常に沸かしたお湯を準備し、それを冷まして使う。三煎まで使う茶器は、最初から最後まで自分専用の茶器として使用できます。都度茶器をふく茶巾も、一度も同じ面を使って拭く事はありません。
フツフツと湯を沸かす音だけが聞こえ、お客様に見せるお点前中は少しピリッとした緊張感ある空気に変わりました。
一煎、二煎、三煎と、下にのせる一滴二滴の味の変化をご堪能頂きました。
煎茶手前は、後片付けまでが見せる作法です。

 

 


■お凌ぎ(厳選四種)
パンは、芦屋「ベッカライビオブロード」
当日電話予約でしか買う事が出来ないこちらのパン。営業時間開始と共に、なかなか電話が繋がらない人気店です。
今回の会では、お出しする直前にトースターで少しだけ焼き、外はカリッ。中はしっとりに仕上げ提供されました。
ポテトは自家製です。上にかけたオイルには、焦がしニンニク・オリーブオイル、アンチョビが入っており、皆さんから大絶賛でした。このオイルにパンをつけても美味しいのです!
他には14ヶ月熟成させた生ハムや、シチリア島産 セミドライトマトのオイル漬け。
このトマトは器に盛るのではなく、平面に置いたら面白いというアイデアから生まれた作品です。
スッキリした美味しさの、自家製すだちソーダも一緒に。

■珈琲懐石
珈琲豆は、京都カフェ・ド・ガウディ(グァテマラSHB深々煎)
標高1350m以上の高地で収穫された上質の珈琲豆です。こちらはストレートでお召し上がり頂きます。
添え菓子には「ボッシュ・ドュ・レーヴ芦屋」の和三盆ボーロ・メープルフリアンを添えて。
その後、150年前のオールドバカラのリキュールグラスにはミルクを入れた「オ・レ・グラッセ」です。
珈琲とミルクが層になっています。飲むと最初は苦味。その後カフェオレのミルク感へと変化していき、最後は子供が飲めるほどの甘味になります。
舌が甘味を探そうとし、みるみる内に変化する味を楽しめる。だけじゃなく、
お・い・し・い!!!(おかわりないのが残念です)
最後はデザートに「珈琲ジュレ」となりました。
このジュレをすくう、漆スプーンの口当たりが本当に気持ちいいんです!


この会は約2時間30分ほどになります。
期待して参加された方が、「期待以上に良かった」「細胞が喜んでいる」という嬉しい感想を残されていました。
そして何より作品を使ってお召し上がれるので、漆椀を持った時の軽さ。使い手を想って製作された使いやすい工夫。口当たりの気持ちよさに驚かれた方もいらっしゃったと思います。
だからこそ、特別な行事だけでなく、毎日でも使いたい。
漆器の良さも知って頂けたと思います。
美味しいだけの満足じゃなく、土井さんの演出や、作品の素晴らしさ。豊富な知識とユーモア溢れるトーク込みで、お腹も心も満たされる会となりました(^^)