展示・イベント

信ヶ原良和 彫刻展-2021 梅雨のお庭と彫刻を愛でる-

概要
作家・主催者 信ヶ原 良和
期間 2021年6月14日(月)~6月26日(土)
時間 9:00~18:00
備考 ■金属彫刻
■経歴
1957 京都に生まれる
1978 京都精華短期大学立体造形科卒業(京都市岩倉)
1992 半田市野外彫刻展 <優秀賞>設置(愛知県半田市)
1994  第9回国民文化祭みえ(野外彫刻部門)<文部大臣奨励賞>設置(三重県大宮町)
1996 ‘96京都府美術工芸展<大賞・買い上げ賞>(京都文化博物館)
1999 第18回現代日本彫刻展 入選(山口県宇部市)
2002 第20回京都府文化賞(平成13年度)<奨励賞>(京都府)
2007 第22回国民文化祭とくしま2007 野外彫刻展<文部科学大臣賞>(徳島県徳島市)
2016 街なかミュゼ第2弾(aaca企画)一年間作品設置(セイワビル/東京都江戸川区)
2017 日本芸術センター第6回彫刻コンクール(買い上げ)(東京芸術センター)
2018 「日本と台湾の美術交流展」(二条城二之丸御殿御清所/京都)
2019 京都王藝際美術館に「落葉の雲と雨」設置(中京区西ノ京/京都)
   第8回朝来アートコンペティション2019<但陽信用金庫賞>(兵庫)
2020 第58回徳島彫刻集団野外彫刻展(徳島中央公園)
   aaca 街に飛び出す作品展(東京都)
   2020-12/12~2021-06/08 「イマジネーションを描くⅡ」(京都府立京都学・歴彩館)
2021 第8回日本芸術センター彫刻コンクール(日本芸術会館/神戸市)
   「2021 梅雨のお庭と彫刻を愛でる」(THE TERMINAL KYOTO)
   京都彫刻家協会・京都文化芸術会議・日本美術家連盟・日本建築美術工芸協会に所属

レポート

搬入日、4人がかりで運ばれた金属彫刻の大型作品は町家の坪庭へ。もう一つは、奥庭へ。
信ヶ原さんの金属彫刻は野外をメインに設置されました。

金属は日の陽射しに強く、雨風にも強い素材です。
その特性を生かし、「梅雨空・しずく・雨音・陽の光」を味方につけ、何か出来ないかな。
あえて梅雨の時期に展開すると、金属ならではの何か面白そうな事が起こる予感しませんか。

信ヶ原さんのお父様は公務員のお仕事柄、京都芸大などに出向されていて、お父様から金属彫刻家の堀内正和・辻晉堂・八木一夫さん達の話を子供の頃からよく耳にし、美術に関心を持っていたそうです。
京都精華短期大学立体造形科に進み、授業で木彫りや、石を彫る事も一通り学ばれますが、その中でも金属というジャンルが一番しっくり馴染まれたとの事です。

卒業後も溶接の勉強がしたく、金属製作所に務めながら、ご自身のアトリエでは小さなサイズの作品作りを続けておられました。
次第にコンクールで入選し始め、収入になる事も。
作家でご飯が食べていける。自分には才能があると思い込んでいた時もあったなぁ~。と、昔を振り返るようにお話される信ヶ原さん。
テーマパーク(ハウステンボスや、スペイン村)にある樹脂で出来た造形物を作っている会社で働く時期もあり、務めていた彫刻家の親方からも造形の面白さを教わります。
大学の恩師や社会に出てからの出会い。金属の面白さに触れ、現在信ヶ原さんは大学で造形の技術指導に就きながら、金属彫刻家の制作を続けていらっしゃいます。

さて、町家の枝葉がない坪庭には、金属作品による木の生命が運ばれました。
ドーナツ型の土台は、下の部分は鉄を錆びさせ、上面はステンレス素材、枝は鉄を錆びさせています。

陽の光を受け止めて反射するステンレスは、まるでキラキラ光る水面から木が延びている様。
展示期間中、枝の先端にはトンボが一休みをしている時間も見られました。
そして大粒の雨が突然降りだした日。
バチバチバチバチ!と音が聞こえ出しのは、大型ステンレスに降り落ちる雨音でした。
トタン屋根に落ちている様な、なかなか大きい音です!! 信ヶ原さんは「品のない音やなぁー」と口にされます(笑)
素材や形状よって違う音は、野外だから感じる事が出来る生きる音です。


奥庭、造形円盤型の作品はステンレス素材です。
一枚板かと思っていましたが、薄い板を火で炙り、二枚の板を側面で付着させているので、中央は空洞だそうです。
火で炙ると黒くなるので、それを磨きピカピカな状態に仕上げている為、実は手間がかかっている作品との事ですよ。
そして火で炙る事で、ボコボコと歪みが現れるので、作意とは違う物になる時もあり、それはそれで面白いと仰っておられます。

風が通り抜けると本当に微妙ですが、円盤はゆらゆらと揺れる仕組みになっていたのです。
それは、風の気配。
小雨が降れば、雨音を拾わなくても、ゆれる事で雫が当たっている想像をかき立てる。
気付かない人もいるであろう、小さく優しいゆれ具合。
日常においても、そんな些細なことに “あ…!” と気付き、心が潤う感性って素敵な事であり、そうでありたいと思える作品でした。

様々な形状とサイズで作品がある“ゆれる”シリーズ。 コンクールに応募していた時代にも取り入れていらっしゃり、それが受賞にも繋がるのですが、今の時代は世間において“危ない”という思考に変化しているそうです(なんだか寂しいですねぇ。。)


在朗時間、ノートにデッサンを描く信ヶ原さんのお姿をよく見かけました。
作品作りをイメージする時間や、制作する時間とありますが、溶接している時が一番楽しい時間だそうですよ。
木や石といった彫刻は、元の素材から削る・彫るといったマイナス行為ですが、
金属彫刻は曲げたり叩いたりして、溶接して付け足していく方法が、僕の彫刻のやり方だと仰っておられました。

野外に作品を置く事がお好きで、それは室内より自然光で光が生きているから。
「野外はちょっと雲がかかっただけでも変わるし、太陽と雲の影によって明るさが作られるから、そんなん考えると生きてるし、いいなー。て思う。
外の空気を作っている風とか光とかを利用できる。せっかくなら、それを感じるような事をしたい。
その場所に合う・合わないってあるから、そういうのを大事にして造形していきたい」

今後は、外で撮った映像や音を使い、室内展示でも外の匂いや気配を感じるような展開を考えていらっしゃるそうですが、

「今は野外を楽しんでるけどね!!」

と、外の魅力をたっぷり力強く感じる言葉を残されていました。