展示・イベント

叢展 -それでも植物は揺るがない-

概要
作家・主催者 小田 康平<植物屋>
期間 2021年2月19日(金)~3月7日(日)
時間 9:00~18:00
備考 経歴
1976年 広島生まれ。
世界中を旅する暮らしをしていた20代の頃、旅先で訪れたパリで、フラワーアーティストがセレクトショップの空間演出を手掛ける様子に感動。
帰国後、生花と観葉植物による空間デザインに取り組むようになる。
数年がたち、画一的な花や植物での表現に限界を感じ始めていた頃、ある世界的アートコレクターと出会い、納品後に傷ついた植物を見て発した彼の一言「闘う植物は美しい」に衝撃を受ける。
以来、植物選びの基準を、整った美しさから、『いい顔』をしているかどうかに変える。
独自の視点で植物を捉え、美しさを見出した一点物の植物を扱うことを決心し、2012年、独自の美しさを提案する植物屋「 叢 - Qusamura 」をオープンした。
〝いい顔してる植物〟をコンセプトに、独自の美しさを提案する植物屋。 店主みずからが日本中を旅して集めた個性あふれる植物を、 その個体の特徴を引き出す器とあわせて提案する。
店名は、店主が植物を見つける場所を叢と呼んでいたことから、 普通の人にとってはただの草の群がりに見える場所に、 個性ある美しさが眠っていることがある。
『Qusamura』の〝Q〟は、「Question」からとったもの。
個性的な叢の植物たちに出合ったとき「これ、なに?」と、はじめに不思議を感じ、「?」から叢の世界観に入ってほしいという願いが込められています。

レポート

植物は地に根をおろす
定めた場所に逆らわず生きる
たとえその場所が不得手な地で
あろうとも一所懸命だ

人の住めなくなってしまった
土地にも雑草は繁茂し
人が眺めに来なくとも
桜は咲く

植物は揺るがない

そんなたくましい地球の住人たちの
揺るがない生から
力をもらう展示会

今回の展示を開催するにあたり独自の視点で植物を捉え、美しさを見出した一点物の植物を扱う叢(くさむら)の店主である小田康平さんに冒頭の言葉を依頼しました。

小田さんの植物の選定基準は通常のそれとはまったく違います。
対極に基準を設けていると言ってもいいくらいに独自の審美眼があります。
つまり並べられたその多くが、一般的に市場価値が無いとレッテルを貼られたものたちばかりなのですが、なぜこんなにも心が動かされるのでしょうか。
途中で切られてしまったもの、 一部が枯れてしまったもの、強制的に環境を変えられてしまったもの。
彼らの多くが外的要因によりその姿を否応にも変えざるを得ませんでした。
いま私たちが見ているのは、生きていく中で自らの姿・形を変え、環境に適応しようとした結果です。

COVID-19の影響により、多くの人がその動きを制限され、
通常の営みだけでなく、生きることさえも難しい局面に立たされています。

福島を訪れた小田さんは完全に破壊された人々の営みとは裏腹に力強く葉を広げる植物たちの力強さに驚いたと言います。

冒頭の言葉にあるように、人が眺めに来なくとも桜はいつもどおりに咲くのです。
太陽に向けて枝を大きく伸ばそうとします。

容易に動くことができない彼らは環境に合わせて自らの形を変え、生きるために抗い、闘争を続けます。

私たちがいま見ているのは単に生きようとしている姿です。
その生きるという行為が、ただ美しいのです。

『いろいろなことが起こるけど、それでも生きよ。その姿はかくも美しい。』

わたしにはふとこの言葉が頭に浮かびました。

世界がどう変わろうと、変わらず強く生き抜く植物たちは、
現在を生きる私たちへの強烈なメッセージとなると感じました。

人間の作為通りに生きるもの、作為に反して生きようとするもの、
その生き様はまさに人間そのもの。

私たちは彼らの姿勢から多くのことを学べるはずです。