展示・イベント

呑海龍哉写真展「SPIRIT OF KYOTO」

概要
作家・主催者 呑海 龍哉
期間 2020年9月13日(日)~9月26日(土)
時間 9:00~18:00
備考 ■写真
■呑海 龍哉
■プロフィール
 京都在住のフォトグラファー、建築家、インテリアデザイナー。
 幼少期より絵画を学び、京都工芸繊維大学で建築を学ぶ。
 建築の設計では非日常的な空間を突き詰め、その反動からか写真では日常的なものに興味を抱き、日常の美しさを写真収める今のスタイルになった。
 また、絵画や建築的なバックグランドも写真の視点や構図に影響を与えている。
 アルバート・ワトソンから直接写真を学んだことで非常に大きな影響を受け、京都のみならず海外への撮影活動も積極的に行っている。

■経歴
主な展示会
2012年2月 「小粋な京都」京都ロイヤルホテル&スパにて写真個展
2013年2月 「ASIAN DAILY LIFE」京都ロイヤルホテル&スパにて写真個展
2013年8月 「京都時間」京都ロイヤルホテル&スパにて写真個展
2014年5月 「眼差し」ほんやら洞にて写真個展
2015年5月 「ホテルという小宇宙」八文字屋にてスケッチ個展
2016年2月 「夢の続き」奈良市写真美術館にて写真個展
2016年4月 「夢の続き」Photo Gallery Artisan Japanesqueにて写真個展
2016年5月 「京都夢物語」同時代ギャラリーにて写真個展
2016年5月 「京都夢物語」恵文社一乗寺店にて写真個展
2016年11月 「BHUTAN DAILY LIFE」Photo Gallery Artisan Japanesqueにて写真個展
2017年1月 「京都夢物語」レティシア書房にて写真個展
2017年5月 「SLI LANKA WONDERLAND」京都写真美術館にて写真個展
2017年7月 「京都夢舞台」鍵屋ギャラリー・空にて写真個展
2017年9月 「ホテルから始まる夢の旅」鍵屋ギャラリー・空にてスケッチ個展
2017年12月 「ホテルから始まる夢の旅」恵文社一乗寺店にてスケッチ個展
2018年5月 「SPIRIT OF KYOTO」パリ GALLERY METANOIAにて写真個展
2019年4月 フランス サンリス「SENLIS ART SACRE」に出展
2019年5月 「SPIRIT OF KYOTO」ロンドン ART HILL GALLERYにて写真個展 
2019年7月 「ブータン 祈りの大地」レティシア書房にて写真個展
2020年1月 パリ COMBES GALLERYにてSENLIS ART SACRE受賞展

受賞歴・掲載
・フランス サンリス「SENLIS ART SACRE」
・GALLERY AUP(COMBES GALLERY AWARD)賞受賞
・NTT西日本 Clip clip onでお散歩写真家の匠として紹介

著書
「京都夢物語」
「ホテルから始まる夢の旅」

レポート

京都をテーマにした「SPIRIT OF KYOTO」はパリ、ロンドンをえて、呑海さんの出身地である京都での展示です。
カメラを手に取り、京都の町を歩くお散歩フォトグラファー呑海さんは、パリのスナップ写真の様なものを、日本でも撮りたかったという思いから、撮られるお写真はどれも日常で出会った一瞬の光景を素早く写真に収めたものばかり。
あ!と心が動いたらカメラを構えるスタイルです。
人物も風景の一部のような、呑海さんの撮られるお写真はどれも自然な表情と、その場の空気間を感じ取れる様な感覚になります。

この場所で撮れたら面白そう。と心が動いた時、時間をねばって人が通るのを待つ事があるそうです。例えば作品「食事中」。
屋根の上に椅子がある?!そこに人が現れたら面白そう!がきっかけで時間を粘って撮られたお写真がおちら↓
屋根の上でお食事をガッツいていらっしゃる!お天気ぐあいも想像ができ、とっても気持ちよさそうです(私も体験したい…)


そして撮った写真にエピソードを膨らませる点も呑海さんの面白いところです。
例えばこちらのお写真、南禅寺で腰をかける後ろ姿「それぞれの人生」↓
お2人とも赤の他人の設定で、
「私のところは妻が先に逝きましてね・・・。ふらっと一人旅で」「私も実は・・」と会話をしている様な雰囲気で。。

「ひよっこ舞子」
京阪電車の地下 祇園四条駅にて、芸子さんと舞子さんが歩かれていた時、上りエスカレーターで、一列に並んだ写真が撮れたら面白そう!
呑海さんの心が動き、慌てて階段まで移動して一瞬を撮り収めたお写真です。
時間を粘って撮る写真だけでなく、この時の様なワンショット作品も多いそうです。
この作品のエピソードは、先頭に立つ芸子さんが振り返って、後ろの新人舞子に「あんた、襟を正しや。乱れてんで」 新人舞子は「へぇ」と会話している様子。


作品にはこの様な、ほのぼのした呑海さんの思うエピソードがある訳ですが、今回の展示では何といっても二階の和室、写真を襖に起こした作品が見どころではないでしょうか。
町家で展示されるのは初めてとの事で、襖を作成されました。
最初は呑海さんご自身が、襖の大きさで和紙に納得がいく色の出具合を見つける為に、沢山の種類の和紙に試し刷りをされたそうです。
しかしなかなか合う和紙が無く、この和紙ならいける!と発見されてから、襖屋さんに作成依頼しに行かれます。
しかし「今までこんなん、やったことない」と何店舗にも断られてばかりで大変苦労されたそうです。
ようやく引き受けて下さる襖屋さんが見つかり、完成した作品になります。
お若い店主さんでした。呑海さんから依頼があった時、「面白そうだけど、最初は不安があった。しかし、呑海さんが持ってきた和紙を見て、これならいけそうだ。」と思われたそうです。
呑海さんは、襖屋さんとのコラボレーションを次作のお考えにあるそうで、襖屋さんも「勉強しながら次にチャレンジしたい」と前向きなお考えを聞かせ下さいました。


ほのぼのした写真の他に、呑海さんの視点は大好きな京都の町だからこそ、
古き良きものが取り壊され、京都本来の魅力が失われていく様子に複雑な想いを込められています。
防空壕東側の展示「最後の灯」
宇治黄檗にあった新生市場は、呑海さんが子供の頃コロッケを買いに行き、人々が通い賑わっていた市場。
しかし市場の周りに便利な大型スーパーやコンビニが沢山建ち、市場から人々は遠ざかっていきます。一軒づつ店が潰れていき、ついには最後の一軒 乾物屋だけが残った。
写真はその時の商店街を、昼間に撮ったものです。
お婆さんお一人が裸電球を灯し、細々と魂を込めて最後の灯を灯し続けていたが、約2年後には線香花火の最後の火が消えるかのように、その灯は消えてしまいました。
それが合図かの様に、市場の解体はすぐに行われ更地になったそうです。
便利と引き換えに人々の繋がりや笑顔、コミュニケーションが失われてしまう。
京都をこのグローバリゼーションという大きな波から守っていく努力をしなければならない。町が変わった中でも、どうにか踏ん張って頑張っている人もいる。そんな京都を伝えたい。と呑海さんは仰います。


普段は建築家のお仕事をなさっていますが、お散歩フォトグラファー、インテリアデザイナーでもあります。
ご自身でホテルフェチと言われるだけに、世界を旅してホテルに泊まる事が大好きな呑海さん。
ホテル選びにもこだわりが強く、かつて宮殿だったホテル。建築家が生涯かけて造り上げたホテル。植民地時代の邸宅など等、歴史あるホテルを探して旅されるそうです。
そして職業柄、旅先で泊まったホテルのお部屋を実測してスケッチをする。
展示では、約20年かけて旅をされた、ホテルのスケッチ作品も数点ご用意下さいました。
今回、町家で展示をする事が決まり、なんとThe Terminal KYOTOの間取り図を書いて下さいました。
何度も何度も町家に来て、喫茶ルームの卓袱台でスケッチされていました。奥行き50mある町家を、絵巻風に仕上げた大作です。呑海さん有難うございます!


写真と撮る時間、スケッチする時間は呑海さんにとって仕事モードではなく、完全OFFの過ごし方だそうです。
今は海外に行けない状況ですが、2年後ぐらいにまた海外を旅し、ホテルのスケッチや海外での展示がしたいと仰せでした。


喫茶ルームでThe Terminal KYOTOの間取り図を書かれている呑海さんと、相棒のカメラ。