展示・イベント

大黒貴之 個展 「Cosmos」

概要
作家・主催者 作家:大黒貴之(彫刻家)
企画:Art agent Kaïchi
期間 2021年8月11日(水)~8月29日(日)
時間 9:00~18:00
備考 作家在廊予定日
  11日(水)、14日(土)、28日(土)、29日(日)
 ※変更の可能性もございます。

レポート

木を使う、紙を使う。彫刻家 大黒貴之さんが考える彫刻。
あらゆる形で表現された作品を、ご紹介させて頂きます。

二度ドイツに渡った6年半のヨーロッパ生活。その経験が大きく制作スタイルに関わっています。
それは毎日、息をしていると同じ様に制作している姿。
どういう事かというと、いつ声がかかっても展示が出来る様に常に準備しているという事。
野球選手で例えるなら、急に呼ばれてもピッチに立てる様に毎日練習を重ねて準備をしている。そこで結果を残し、そうじゃないとプロとして残っていけないですよね。
個展が決まったなら1年の準備期間が必要ではなく、どの様な場でもすぐに発表できる様に、大黒さんは準備されているのです。
グループ展や小さな発表の場でも、そこに全力を注ぎ、そこからチャンスを掴んで個展などに繋げていく。
ヨーロッパの沢山のアーティスト達は日常的に作品を作り、クオリティーを上げ、それが当たり前であった事から、大黒さんもその様にしてタイミングとチャンスを掴んでこられました。

手塚治虫の様な漫画家になりたいという夢は、ストーリーを考えるのが苦手な事から中学・高校で断念するも、絵を描く事はお好きでアート関係の仕事をしたいと思っておられました。
大学院卒業後(学部は絵画専攻でしたが、大学院から彫刻を学ぶ)周りの友達が就職している中、ポツンと置いてけぼりの様な感覚に襲われます。
海外の事情はどうなっているのか。日本から飛び出したい気持ち。海外のアートシーンを見ようと、ネットワークもなければ、言葉も話せない中でどれだけ出来るのか。1年間で個展をする目標を抱えて24歳でドイツへ渡ります。
もしそれが出来たなら作家として続けよう。出来なかったら向いてないと思って辞めよう。

最初は言葉の壁がありますが、後半に個展のチャンスを掴んだ後、一度日本へ帰国されました。
しかし世間とのギャップを感じた事、作家としてのビジョンも見えなかった事、父の死。
すぐに死んでしまう人の存在を目の当たりにし、うだうだやっていてもしょうがないから、もう一回勝負しにいこうと、33歳で再びドイツへ行き(5年間半滞在)、実績をあげて帰って来ないと照明出来ないからと必死で活動されたそうです。

■Cosmos / コスモス

スタイルフォームとう発泡スチロールよりも固い建築材を使ってベースを作り、柔らかさを出すために新聞紙で型をとって固定。
その上に和紙。最後に日本画でもつかう胡粉で塗装。
本個展のタイトルにもなっている 「Cosmos」は「秩序ある体系」や「調和」を意味する。


■CERES / ケレス

「CERES/ケレス」は、自然や生命の象徴としてローマ神話に登場する豊穣の女神のこと。
ベルリンのSemjon Contemporary/セミヨン・コンテンポラリーで2013年に発表。
当初は和紙を使用していたが、帰国後は漆喰を用いるようになった。
シンプルな形状のパーツが連続して成っているものが多くみられる。「ケレス(ゾイレ)」はドイツ語で「柱」を意味する。
その連続体の中から5つのパーツを取り出し、柱状に拡大した。


大国さんの作品には「両義性」がテーマにあります。
海外はYES/NOとはっきりした分ける文化が根付いてますが、日本は曖昧な文化。
それは日本の建築にも表れていて、玄関だと室内でも靴を履く所、こかからは靴を脱ぐ所といった様に、内でも外でもない空間が存在する。中だけど外の様な縁側も。
そういう曖昧な文化を日本の美学だと追求されています。
目に見えない揺れ動く様なものを彫刻で表したらどうなるんだろう。と。

■Drei CERES /ドライ・ケレス

1つの木から削っていってる。シンプルな形ですが穴がある事によって哲学的な意味を持ちます。
中と外、曖昧な関係を常に意識している事から、
穴は空だから無。しかし穴を開ける行為は有。
中に漆喰が塗り込まれる事によって中を意識させて、有を表現。それが両義性として両方の意味が同時成立している。


■Folded drawings / フォールド・ドローイング

一見硬質な金属に見えますが、紙の素材。
絵画は二次元の世界。しかし紙を折った瞬間から立体像の三次元の世界になる。
それを伸ばし時、凹凸が出来る事によって三次元と二次元の間の表現をしてます。

ドットという穴を開けることによっても光と影が発生し、面は奥行きある彫刻へ。

鉛筆を塗り込み、艶がある黒色に見せる作品もある。紙の素材が、まるで金属っぽく別の物のよう。


今の表現じゃなく、20年後に作品がどう見られるか。評価されるかを意識し、先を見て作っていらっしゃいます。

「作家の音色(スタイル)を掴むまでは大変やった。
何したらいいか、何作ったらいいか分からないし。場数と経験でだんだん安定していった。
今は掴んだスタイルを展開していってる。
今までは前半戦(旅路)。ここからが後半戦で2021年は僕のなかである意味転機。
小さい物、大きい物、外で置く物。どこでも対応出来るから、ここからは展開してより多くの人に知ってもらいたい。そこはアートの多分、醍醐味かもしれない」

ドキュメンタリー映像の中でも
「今までの歩みが次の5年、10年に繋がってくるんだと思うし、長いスパンの中で免許も資格も持てない芸術家っていうのはリアルな社会のご縁の中で実績を積み上げて作品を見てもらい、誰かに作品を所有してもらい、歩んでいくのは一番大事な事なのかな。というのは改めて思っています」と言葉を残されていました。