展示・イベント

小林雄一、西山奈津 二人展 -つちをみる-

概要
作家・主催者 小林雄一、西山奈津(陶芸)
期間 2023年12月23日(土)~2024年1月21日(日)※【年末年始休暇】12月30日~1月6日
時間 9:00~18:00

レポート

 

タイトルの「つちをみる」の表現が魅力的だと思いました。
概要文に、ただ目で見るだけじゃなく、触ってみたり。そういう所も”みる“という意味に含まれている事が書かれてありました。
私達はつい、色でパッと見てしまいますが、実際にお2人の作品を持ってみると手に合う様な、馴染むな様な。重さも丁度いい感覚でした。
小林:嬉しいことです。
西山:嬉しい~。とても意識してるところだったんです。
傾向として、すごい薄くて軽いのが良しとされるのもありますけど、軽い・薄けりゃいいってもんじゃないと思うんですよね。
手馴染みの良い重さとか、そのものに合った厚さってあると思っていて。
小林:食器は軽い方が良いんだろうな~。ていうので軽さは重視して作ってるんですけど、趣味で使う抹茶碗や、ぐい吞み。実際に持ってもらって感じてもらえたらと思います。

じゃぁ、この厚さでいくぞ。みたいな拘りを持って作っていらっしゃるんですね。
小林・西山:そうですね。
西山:そこはね、もぉずっと作りながら心地いい厚さを探って、自分でも使ってみますし、色んな発表の場を重ねて今の感じになってきたかな。
小林:独立して10年くらい経つんですけど、色々やってきた中で丁度いいなっていう落としどころというか。
西山:最初は結構違ったもんね。
ほんとにちょっとずつ。窯焼きとかでも釉薬かけて焼くじゃないですか。
思った通りになったり、思ったのとちょっと違ったりとか。
そこから「あ、でもこの表情良いよね~」みたいになって。
そういう積み重ねで造形も頭の中で考えてたり、デッサンした形をまず作って、焼いてみて初めて分かることがありますね。
小林:うん。
西山:ほんとにその積み重ねですよ。かなり変化したよね、作るものもね。
小林:最初僕は、“伝統の陶器”みたいな凄く渋いのが好きで。悪く言うと雑だったり、すごく重かったり。
でもそういう物からもう少し綺麗に作ろうという時期も通って、今の感じに落ち着いたんです。
西山:やっぱり作って発表するなかで、色んな影響を受けるじゃないですか。
例えば、同業者の色んな人の作品を見て影響を受けたりもするし、陶芸とは関係ない絵画だってそうだし。自分の感性とかも10年で変化し続けてきて…。
自然とか動物からの影響は多かったんですけど、やる仕事、やる場所によって、毎回自分の感性が変わっていって。だから今、昔のを見るとびっくりします(笑)

自然や動物がテーマの中心だったんですか?
西山:最初はそうでした。今はもっと感覚的な感じで作ってますね。

小林さんも何かテーマがあられるんですか?
小林:新しい物より古い物が好きで、例えばアンティークとか、家なら町家みたいなのが好きで。
やっぱ素材だったり、作り方の丁寧さ。そういうのを陶器に落とし込んで、素材を生かしたものづくりを…。
西山:使う粘土や、釉薬の原料が違うだけで全然変わってくるので、そこだけはね、やっぱりずっとこだわってます。

磁器もされるんですか?
西山:私、磁器やってないから…。
小林:少しやった事あります。でもちょっと向いてないかも(笑)
西山:粘土の面白いのって、生のとき柔らかくて、焼くと硬いじゃないですか。
その柔らかさと硬さの表現が両方できるのが、土ものの面白いところだと思ってるんです。
今回の展示で土間に置いた花器とかも、やっぱり柔らかさと硬さの両立を表現。
それで私は“刳り貫き(くりぬき)“っていう技法なんですけど、ロクロでも手びねりでもなく、土の塊の状態から彫刻みたいに刃物でしのいだり、ワイヤーで削いだりして、後はもうひたすら彫っていくやり方をしてるんですよ。

展示してあるパネルの写真で、手に四角い何かを持っていらっしゃいますね
西山:あ、石! あれ御影石だっけ?」
小林:うん、庭石とかで使われる庭にデザインじゃないですけど、御影石っていうもので。そのゴツゴツ具合がちょうど良かった感じで。
西山:あの石をバンッ!てぶつけるんです。そうすると柔らかい粘土が自然とゆがんで、その歪みを利用したり、刃物でガッと削った硬さだったり、その動きが面白いと感じるんです。

土の特徴をそのまま向き合っていらっしゃるんですね。無理矢理押し込めてないというか、自然に出てきたそれを受け止めるみたいに感じます。
先ほど仰ったワイヤーというのは?
西山:土間に置いた白い花器とかは石は使わずに、刃物とピアノ線、ワイヤーだけでやってるんです。
あれも刳り貫きで作っていて、ワイヤーだとすごい細いから動きが出るんです。
形はシャープだけどその動きが面白いので、石を使ったタイプの織部と、ワイヤーの造形と作りました。両方同じ刳り貫きで。

どぉしてワイヤーを使おうと?
西山:偶然なんです。私が頭で想像しやすかったっていうのがあるかな。
手びねりもやったりはするんですけど、思ったものをまず最初に形に作れちゃう。
すごく造形がしやすかった。そしたらもぉ気が付いたらずっと刳り貫きばっかりなんです(笑)ほんと自然発生的なものだよね。
小林:うんうんうん。

西山:石があって、ぶつけてみたら面白かった。みたいなスタートなんですよ(笑)
例えば板皿なんかは自分の手をガッと、手の跡なんですよ。
自分で“指しのぎ”って呼んでるんですけど、色んな道具の遊びの延長でどんどん色んな造形ができてったって感じですね。

偶然性を大事にされてるんですね。
西山:これが正解みたいな教え方もあって全然いいと思うんですけど、私は陶芸は自由なものだから、どうやってもいいから自分の感性で作りたいというのが第一にありますね。

先ほど、素材も拘っていらっしゃると。益子の土地がふさわしいと思うきっかけがあられたんですか?
小話:関東圏の産地が益子か笠間しかなくて、益子が近かったっていう。
選んだ理由はそこだけなんですけど、でもせっかく産地に入ったんで、やっぱその産地のこだわって使われている材料とかはそれを使ってます。

その土地ならではのものを使われているんですね
小林:例えば釉薬だと、何個か材料を合わせるじゃないですか。
その中でメインになっている大事な材料を他の産地の材料で作っちゃうのも多くなってきてますが、そういう事はせずに元々ある材料で、元々の作り方で作るのに拘っています。
地元産業をちゃんと守ってくって意味でも、自分が消費しているものは少量ですけど、産地守るってそういう事だと思うんで。そういう意味でも材料は拘って厳選してますよ。

すごく大事なことですね。じゃぁ人工のものではなくて、自然の物から釉薬を作っているっていう事ですよね。
小林:そうですね。益子でいうと、あの茶色い薬、黒い薬は、“芦沼石”っていう益子でしか採れない材料ですし、あとは自分でわらを焼いて薬にしたりとか…。

すごいですね!そこまで…。灰にするのも、すごい時間かかりますよね。
西山:めちゃめちゃ大変なの(笑)
小林:そうですね、はい。
西山:燃やしすぎちゃいけないとか、白くしちゃいけないのとかね。
小林:なんか真っ白く燃やし切っちゃわないで、黒く墨状態に。でも墨でもダメで。ちょうどいいぐらいに(笑)

えぇ!?その感覚…。
西山:そう~。ほんとに焼いてからじゃないと分かんないんだよね。
小林:まぁでも、置いとけばそうなる感じはあるんですけど。うん。
西山:そうだね、ガンガン燃やさずにみたいなことだったよね。

すごいです!しかも自然のものだと不安定っていうことですよね。
小林:そうですね、はい。

そんなに大変だけれども、やっぱり守っていくことを優先されているって凄いです!
だからあんな綺麗な色…。
西山・小林:(笑)
小林:いやぁ、ありがとうございます(笑)
西山:根気!(笑)

根気!! 一番大事かもしれないですね(笑)いやぁすごいな~。
小林:でも不安定っていうのもこう言葉を返せば、その都度なんか違いが出て、今回こんな感じになったんだって。お客様も変化を楽しんでくれてる良さではありますし。
西山:ね、その変化を楽しんでもらうっていうのも。
せっかくね、個人作家だからね。量産品には出来ない様なことはやっていきたいなって、ずっと思ってます。

お2人でアドバイスし合ったりされますか?
西山:うちはかなり。
小林:毎晩…。

毎晩!?
西山:そうだよね。人によっては口出ししないとか、部屋も分けて作る方もいらっしゃいますが、うちはずっと一緒に作ってるから。
小林、西山でそれぞれでやってますけど、私も参加してる気持ちだし、ここのコレいいね。とか。
小林:第三者的に見て、あの作品もう少しこうしてもそれっぽいかも。とか言って、そのままやる訳じゃないですけど、じゃぁ試してみようかなみたいな。
しっくりきたらやるし、違う時もあるし。
西山:自分だけで考えるよりもね、いいよね。
言われてもやらない時とかは、私はやっぱりこれに拘りを持ってるんだな。て再確認する事もあるし(笑)
小林:せっかく2人でやってるから、それをちょっと強みにしよう。て話を前にしてて、1人でやってるとやっぱ、これって俺の個性なんだと気付かない事もあるんで。
西山:気づかない!
小林:そういうのを個性だよって言われると、あぁそうなんだ!じゃぁちょっと意識してやってみようとか、逆も然りで…。
だから結構しゃべりますね毎日。あ、酒も飲むんで(笑)泥酔しながら(笑)

陶芸を勉強している私としては、そこに入れて頂きたいくらいです(笑)
小林:西山:(笑)
小林:だから結構、忘れちゃってるんですけど(笑)
西山:昨日、何言ってたっけみたいなね。ほんとそんなんだよね(笑)

言われたことで、お互いに凄く変わった事はありますか?
西山:なんだろな。織部はとっくにやってたんですけど、今は色んな種類の織部をやってるんです。
土を変えたり、合わせる灰を変えたり。自分の理想とする一個が出来上がるまで他を一切見ないタイプなんで。
なんならそれが出来たら一生それを、やりそうなタイプなんですけど、何かこういうのもいいじゃんみたいな事を言ってくれたりして、なんだろう…。
長い時間を経て色んなもをフラットに見れるようになった感じがします。作風も釉調も含めて。うん。

バリエーションが増えた感じですか?
西山:そう、増えた!うんうん。色んなものの良さに気が付いた所はありますね。

小林さんはいかがですか?
小林:俺は逆かもしれないですね。色んな事に興味があって、すーぐ変えたくなっちゃう。色んな事をちょいちょいつまんでは止めちゃうんです(笑)
作るよりもテストして、色んな新しい薬が出来る方が好きなんですよ、研究みたいに。
でも形にしないと個展にならないので、普通に作ってると、
「色んな色があるっていうのが個性じゃん。別に形がどうこうとか深く考えなくていいんじゃない?どんどんテストやって、同じ形でもやりたい色でやったらいいじゃん」
みたいな事を言われた時に、そっかそっかぁ。というのは結構…。
1人だったら作家になってるかどうかも怪しいぐらいかなって思います。
西山:ほんと研究者タイプだよね!私は研究もしないけど(笑)作るタイプなんで(笑)
1人だったら、今みたいな感じにはなってなかったんじゃないかなって思います。
小林:造形、質感、薬に拘るみたいに、まぁ住み分けっていうか勝手にそういう感じになったんで良かったなぁ。と。

お2人の作品を見てると、ロクロとオブジェの間にあるような感じがします。
小林:食器を作ってても食器を作ってるっていう感覚ではないかもしんないですね。
オブジェを作ってる感覚もないですけど、「商品」じゃなく「作品」として見てもらえるものを作ってるっていう感覚かもしれない。
西山:そうだね、私は大学で陶芸だったんですけど、ロクロでご飯茶碗を作るとかしかやったことないんですよね。
何であぁいうの作るようになったんだろ。不思議だね(笑)
使える作品がいいなっていうのは常々思ってて、花器だと花を活けても良し、活けてなくても有るだけで完成されるみたいな事は造形として意識して作ってますね。
石をぶつけた時のうねりが、かっこいいな。とか。しのいだ時の、この面かっこいいな。とかがまず私はあるんです。
その面が一個出来たら、そこを正面にして造形を作っていく感じで。
あくまで自分が、あぁ綺麗だな。かっこいいなと思った瞬間が出てくるまでやり続けて、肉付けしていく。そういう作業で一個一個出来てる感じなんです。
小林:お客さんで「何を意識して作ってるんですか?」て聞かれた時に、
ちょっと、別に…。そういう事ないんだよなぁ(笑) かっこいい物が出来たから見てもらってる感じ。それでいいみたいな。そいういう感覚ですね。
西山:私なんかは見る人によって全然違う感想を言ってくれるんですね。
そうやって抽象化する事で共感する心が生まれると思うし、こっちも自分の感覚に委ねて作ってるんですけど、見る人の感想も聞いてて楽しいし、そこをあえて抽象的にしてる部分はあるし。そういう意味でいうとオブジェの感覚で今回作ったのが、縁側にずらっと並べたお皿。

西山:普通お皿だとロクロでビシっと作るんですが、去年この町家に初めて来た時に、お庭を眺めてたんです。
展示で並べているお皿は全部いびつな形をしてるんですが、あれがふと思い浮かんで来たんですよ。湧いてきたみたいに。
あれはただお皿を並べたんじゃなくて、誰もが持ってる懐かしい景色や川、星空だったり、蛍だったり、そういう景色みたいなものをあそこに添えたいと思ったんです。
そうするとビシっときっちりした物じゃなくて、いい意味でのいびつさだったり、柔らかさを持たせたいな。と思ってたんです。
あれも刳り貫き、削り出しの作り方でやってるんですが、そういうテーマで作ったシリーズです。

まさに感覚で作ってらっしゃるのが凄く伝わってきました。空間にもほんとぴったり合ってますものね。
西山:場所にいって、ぱっとこれやろう!と思いついたのは初めてかなぁ。そこから1年あたためて作ってきた感じです。
あれをお客様が見て、池に見える。蓮に見える。それぞれ自分が見た事のある景色を連想できるのを何か伝わったらいいな。とそんな気持ちで並べました。
下見で町家に来たからこそ思いついた物たちも結構あります。益子で独立したては発想とかが縮こまってきちゃって、一旦スパッと止めて。益子以外で活動をする様になってから奥田さん(The Terminal KYOTOの代表)と出会ったんです。

一回止める行動て、勇気がいる事だと思います。2人だったから出来たとか?
西山:それあるかも!やっちゃえ。何とかなるなる。みたいなね(笑)

今回の展示にあたって、奥田さんから何か事前に言われ事ありましたか?
西山:自由にやりたい事を表現して下さいと。 そういう感覚が益子では絶対に無理ですから。面白い事をやってよ。みたいな(笑)
百貨店だったりすると棚に置くじゃないですか。
奥田さんみたいな人もそうだけど、ここの場所的なことも、全部が初めての事だったので「あ、じゃぁやります!でも温めさせて下さい。」て言いました。
小林:外でする展示って、棚に置くだけじゃないですか。
ここは机も移動していいし、自由にやっていい。でもそれが結構難しくて。何処にどういう風に展示する?部屋は2人の作品を一緒に置く?個別に分ける?
西山:下手したら建物にのまれちゃうから。のまれちゃうから変わった事をすればいいという訳ではないし、何か特別なことを無理やり出すんじゃなくて、自分の中にあるものを最大限表現して、ここでの展示を想像しながら作る。の1年間でした。
考えてる時間は長かったですねー。

ぐい吞みモンスターは独特な形ですが、あの造形を生まれたきっかけ、ストーリーを教えて下さい。
西山:まず私が陶芸家として独立する時に、益子って陶芸の産地なので伝統が凄いんですよ。
色んな作家さんが沢山いて、その中で自分は何をやるべきかを思った時に、私めっちゃお酒が好きなんですが(笑)酒好きがかっこいい酒器を作れないのは違うだろと。
みんなで食卓を囲んだ時に絶対に話題になっちゃうような、そんな物をまず一つ作ってみたいというのがあったんですね。
自分は動物や妖怪が大好きで、そういう面白い物を作る時に、私はロクロをひいたり、手びねりでちょっとづつ作るより、土の固まりから作るので。
ゆがませたり、けずったり、そういう作業をしてたら、”なんかコレ面白いぞ“てなって。
それに口を付けてみたら片口になって、足を付けてみたらモンスターになった!
本当に遊びながら、あれがどんどん出来ていったんですね。
それがきっかけで花器になったり、今みたいな作品に広がっていったのがあります。

その作品シリーズが生まれたのは何歳くらいの頃ですか?
西山:独立してから作ったので、11年前くらいからずーとあれを彫り続けてますね(笑)
作り方も相当変わってきたんですが、前はもっとシャープだったり、一時期はもっとリアルに亀とかカラスとかを作った時もあったんですが、もっと感覚的に色んな子がいる。みたいな、ちょと太っちょの子がいたり、それぞれのチャーミングな妖怪💖。て感じですね。

モンスターシリーズの、マグカップもあったりしますか?
西山:あります。あるんですがマグカップは傷ができやすいんですよ。
引っ張られちゃうんですよ。ロクロだとひいている内に土が締まるじゃないですか。
でも私のは彫ってるので、負担がすごくかかって傷が多い訳です。
だからハンドル付けると、それに引っ張られて、なかなか難しい!半分くらいしか取れないですねぇ。
あのモンスターシリーズで、バ~と埋めるのが大好きなんです。

あの作品を見れば西山さん。てイコールがつきます。
西山:それ理想としてて。私の最終的な理想が、本人(西山)がいなくてもあ、これ西山だって分かるみたいな。凄く理想としているところで。
今回、タイトル付けてないですけど実は「モンスター会議in京都」ていうのがあるんです(笑)
一同:えーーー可愛い~

他にもタイトルありますか
西山:縁側のお皿との所は、あそこに立った時に湧き出たので、そいう意味では「泉」
あとは誰もが思っている景色だったりを思いついてほしいから「景色」でもいいのかなぁ。でも私にとったら「泉」かな

織部だったら、それに向かって作っていらっしゃるんだと思ってたら、全然反対で、偶然性とか瞬発力的なものでびっくりしました。
小林:師匠がそういう人だったんだよね。
結構ユニークな方で、そのいい所をもらってきた感じだな。て僕からはそう見えてます。
西山:考える時間はすごく与えてくれる人だったので、まず思う様にやれと。
無理やり探すんじゃなくて自分の中から出てくるものを大切に。
そういう所を学んだのと、妥協しない人で、これでいいや。というのが無い人なんですよ。
だからさっき言った、“ここの面がかっこいい”その面が出てくるまで私もずーと一日中、粘土の固まりがテーブルだらけになって、自分のカッコいいが生まれるまでずっとやってますね。
妥協しない姿勢は本当に尊敬してて、今もそこは守ろうと思っています。で、小林が帰って来た時に私が粘土だらけになってる状態です(笑)
小林:すんごい事になってます(笑)まぁまぁ納得いくまで、やりなよ。

小林さんの作品は三色シリーズ(黒・白・黄色)があるじゃないですか。
黄色って、あまり見ない色味です。あの色味についてお伺いしたくて。
西山:確かに珍しい。て言われるね。
小林:器で「黄瀬戸(きせと)ていうのが元々あるんですよ。それが好きで。でも焼きすぎると茶色くなるし、焼かなさすぎると、が浅い緑みたいになるし。
色んな黄瀬戸があって、溶けっちゃって伊羅保釉(いらぼゆう)というやつもあるし、難しいと言われる硬い溶けてない様な、かせた様な。そっちの方がやりたいんです。
自分で言うのもなんですが、あの黄色なかなか出来ないんですよ。温度管理、材料の厳選、それらがガチッと合った時だけあの黄色が出るんです。
西山:結構むらが出るよね。顔料を入れちゃうとわりと均一な黄色が出来るけど、顔料を一切使ってない、天然の灰だけでやってるんですよ。
私の織部は金属を入れてるけど、基本的にはそういう色んな灰だと木の種類、植物の種類によって全部発色が変わって来るので、組み合わせたり、一種類だけにしてその良さを出したり。そういう黄色だよね。

じゃぁそのガチッと、いきつく迄のテストが大変じゃないですか?
西山:ほんとテストしてるよね。あれコロナ前の3年くらいだよね
小林:弟子時代からいうと10年ですね。

あの黄色を出すため弟子時代から10年ですか?!
小林:そうです、そうです。黒色もそうですけど大体3年前くらいから急にかみ合ってきて。一気に黄色と黒が出来たんです。
素材の特徴と焼きが丁度分かってきて結果に繋がってきた。て感じです。
色だけでいうんだったら、まぁ出来ると思うんですけど、納得いく色。黒くてもこの黒じゃダメ。この黄色じゃまだまだ。ていうのがあって、バチッと決まったのが3,4年前なんです。
西山:カシの木といっても、その産地が違うだけで全然色が変わっちゃうし、溶けなかったりするし。
もぉ全く違うので、まず自分がしっくりくるのを探すのに、ものすごい時間がかかったし、出来たと思ったら今度はそれが取れなくなって、今それで困っちゃってるんだよね(苦笑)

町家の逸品でも取扱いさせて頂いている黄色シリーズの器。食材をとても美味しく引き立てる色ですよね!
小林:あ、ほんとですか?!有難うございます。
西山:そこ凄くこだわってるもんね。うちの天然色の拘り。

独立されたきっかけは?
西山:先生にそろそろ、あれこれ言われたくないなぁ。自分で考えたいなぁ。と思った瞬間に“あ、潮時だ。”と思って速、辞めました。

小林さんは?
小林:僕は有名な誰かに師事した訳じゃなく、技術を身に付ける製陶所にいたので、大体仕事も覚えたし、自分が食べていける生産量も何となくわかったので、そろそろかなぁ。と思って。

陶芸家としてご夫婦でされていますが、お互いの尊敬している所ってどこですか?普段は言いあわないと思うので、この機会に聞かせて下さい。
西山:すごくフラットに物を見る所かな。そういうのに影響されて私も自分の視野が広がったと思います。
結構わたし、自分の物に対して一直線にグーー!といくタイプなんでが、(小林さんは)すごく幅広く色んな見方をする人なんで、それによって私の視野が広がってると確実に思っていますね。今の自分の造形とかも、ここで言うのも何だけど(照)旦那がいなかったら、こういう風にはなっていなかったと思うのでそういう所を尊敬しています。
小林:俺も似たようなもんで、多分考えている事が違うだけで、感じている事は一緒で、フラットに色々見てて、学ぶ所があるから相乗効果ですよね。お互いがない所を持ってて、フラットに見てフラットに聞いてくれる。話し合って高め合って。そう話し合えるのはいいなと思いますね。
西山:そうだね。

最後に、お客様にここは見て。など拘っていることを教えて下さい。
小林:陶器ならではの複雑な色合いは拘っているので、そこは見て頂きたいですね。
材料の厳選と焼き方、組み合わせ方は、他の人より本当に拘っていると自負しているので。
西山:あえて抽象化して作っているので、“これは花器だ”とか決めつけじゃなくて、フラットに感覚で見てもらえたら嬉しいですね。何かに見えるとか。何か懐かしく感じるとか、そいうものを大切に作っているので。

 

陶芸家としての相棒。ご夫婦としての相棒。お話を聞かせて頂いて本当に素敵なご関係だなと思いました。
追求心が強いお2人の展示作品には、バラエティー豊かな種類で酒器もございます。
研究熱心な小林さんが作りだすお色味、西山さんの動き出しそうな可愛らしいフォルムのモンスターシリーズ。
使って頂いてこそ良さが分かる素敵な作品を、手に取ってご覧下さいませ。