展示・イベント

獣貝草虫の博物誌

概要
作家・主催者 河野 甲
期間 2019年8月29日(木)~9月10日(火)
時間 9:00~18:00
備考 ■皮革立体造形

■河野甲
有史以前から人間の身近にあった皮革。アートの歴史において、マイナーな素材であり続けたこの素材に、用の美以外の魅力を引き出すべく、30年以上にわたり、制作を続けている。

■経歴
1956年 愛媛県宇和島市生まれ
1977年 京都嵯峨美術短期大学洋画科卒業
1984年 皮革造形家として独立
     東京・大阪・仙台・奈良・京都・ニューヨーク・サンフランシスコをはじめ、
     全国各地で個展を行う

レポート

造形作家 河野甲先生は、革を使った様々な作品を制作されています。
元々 虫がお好きな方で、主に生き物を題材にした作品を多く手掛けられています。
土間には見上げる程の大きな作品をはじめ、一階 二階 そして地下と展示がございます。
リアルに表現された昆虫を中心に、空想的な生き物や、恐竜など幅広い作風をご覧いただけます。
見にいらした方は、その見事なまでのフォルムと肌質、そしてこれを革で表現された作品であることに驚かれます。

その様な、革を使った造形作品を本業とされていらっしゃる傍ら、河野先生はカタツムリがとても大好きな作家様です。
何故カタツムリを?と疑問が浮かびます。
きっかけは、ある美術館からカタツムリの革作品を作って欲しい。という依頼(種類の指定有り)があったそうです。
それまでカタツムリに関心がなく、何処に行けば採取出来るか尋ね、捕まえたカタツムリを観察して作品を完成されました。
それが原点となり、謎めいた生体・フォルム・面白い生き物なんだと、どんどんカタツムリに魅了された様です。
今では築100年の農家を改装し、カタツムリに特化した私設博物館「ラセン館」をこの9月にオープンされます。
「かたつむりリアルフィギュア」が数多く並ぶことでしょう。
その「リアルフィギュア」とは、本来は昆虫の様に標本として残したいところですが、現在の技術ではカタツムリの軟体部分は標本に出来ないので、殻は本物。軟体部分は河野先生が樹脂や粘土を使って製作されたものです。
ラセン館のオープンに先駆け、その一部の作品を町屋で展示して下さいました。
河野先生が山で採取された種類や、他から譲り受けた種類の殻を用いたリアルフィギュア標本。
それは日本だけでなく、海外で生存するカタツムリもご覧頂けます。
初めて見る色鮮やかな殻を持つ種類は、キューバやマレーシア、フィリピンなど南の国の種類。
日本のカタツムリも、実際に見たら絶対に怖いと思えるほど大きな種類が生存していると知る事ができます。
目の位置、カタツムリの視界は光を察知するぐらいしか見えてないんじゃないか説。地面を這う体の底面からカルシウムを得て殻を成長させている事。右巻き・左巻きの殻がある事、体は殻の中に全部入ることもあれば、体がぐい~んと延びる事もあるそうです。

展示を見て下さった方、トークイベントにご参加頂いた方の中に
今までカタツムリに興味がなかったり、苦手だった方も、この展示をきっかけに興味が芽生え、何処かで見つけたなら今度は観察してみよう。と意識が変わる方もいらっしゃると思います。

さて、カタツムリを捕りに、河野先生は遠征もされますが、相手は自然の生き物。
カタツムリもそう簡単に人間に見つかる訳にはいかないので、勿論捕まえられない日もあるそうです。
そうだった場合、例えばその土地の温泉につかる等の採取以外の楽しみは一切、用意してないそうで、泊まるのは車の中。しかし、そんな見つけられない一日でも楽しい。と仰せでした。

 

「カタツムリは宝探しみたいなもの」
先生のこの一言に尽きると思います。

 

是非是非この機会に、立体的な革作品とカタツムリに会いに、町屋へお越し下さいませ。