展示・イベント

Embrace 抱きしめる

概要
作家・主催者 竹下桃子キーン
期間 2020年3月23日(月)~4月5日(日)
時間 9:00~18:00
備考 ■陶芸

■経歴
信楽で修行の後、京都の工業試験場の陶芸学科にて2年間学ぶ。
その後独立、京都で作陶をして、2002年にニューヨーク州イサカに住み、ガス窯と穴窯で作陶を続ける。2019年秋に17年ぶりに京都に戻る。

■作品:Embrace (抱きしめる)
台湾国際陶芸ビエンナーレ/金沢工芸トリエンナーレ展/美濃国際陶芸コンペティション/韓国ギョンギー国際陶芸コンペティションにて入賞。
新北市立鴬歌陶磁博物館所蔵(台湾、新台北)
シンシナティーアート美術館所蔵(オハイオ アメリカ)
コーネル大学ジョンソンミュージアム所蔵(NY イサカ)

■EXHIBITIONS & COMPETITIONS
1983~2002: Kyoto, Japan, self-employed as ceramic artist, various annual exhibits
2007, Upstairs Gallery, Ithaca NY
2008, TAMA Gallery, NYC
2008, Johnson Museum of Art, Ithaca NY
2010, Clayscapes Gallery, Syracuse NY
2010, Craft Forms
2010, Wayne Art Center, Juried Exhibition 2011, Windsor Whip Works Gallery, Windsor, NY (group exhibit)
2012, Memorial Art Gallery, Rochester NY
2013, Memorial Art Gallery, Rochester NY
2014, Memorial Art Gallery, Rochester NY
2016, Smithsonian Craft Show, Washington DC
2016, Taiwan Ceramics Biennale, New Taipei City, Taiwan
2017, Kogei International Triennale, Kanazawa, Japan
2019, Korean International Ceramic Biennale, Gyeonggi, Korea 2017, International Ceramics Competition, Mino, Japan

■COLLECTIONS
Johnson Museum of Art, Ithaca NY (Large Vessel, 2007)
Private Collection of Lilia Villanueva, owner, TAMA Gallery, NYC (Small Vessel, 2008) Private collection of Peter Blum, owner, Peter Blum Gallery, NYC (Small Vessel, 2009) Cornell University Plantations Visitor Center, Ithaca, NY (Curl, 2010)
Private collection of Eunice and Herbert Shatzman, North Carolina (Urchin, 2011)
Private collection of Barbara Ramusack, (Urchin grouping, 2011)
Private collection of Dr. Frederick and Joan Baekeland (Urchin, 2011)

レポート

昨年秋、17年ぶりにアメリカから帰国された竹下様。
アメリカの穴窯で制作された作品を持ち帰り、初めて日本でお披露目して下さいました。

渡米する前は女性が穴窯に携われる事はなかなか出来なかった時代。電気窯で主に食器を作っておられたそうです。
しかし渡米後、陶器の食器に興味を持つ人は少なく、「作品を造ってみたら」と旦那様のアドバイスを機に、作風をシフトされました。
そしてアメリカで穴窯に携われるチャンスを持ち、今の竹下様が見せるオリジナル作風へと繋がっていきます。
元々、釉薬のかかっていない無釉の肌触り。質感がお好きで、「土そのものが昔から好き」とおっしゃる竹下様は、ロクロを使わないのも、こだわりの一つです。
釉薬をかけると土がそれに覆われ、ガラス質の様なツルッとしたものになってしまうので竹下様の作品は、土の魅力を穴窯で最大限に引き出す、全て無釉の作品ばかり。

無釉なのに、角度によって色んな色味が見られるのは不思議でした。
キラキラした所。シルバーの色も見られるのですから。
その答えは1300℃の窯中で、灰に覆われながら5日間も炊くところにありました。
・灰による土の色
・隣に置く作品の大きさや位置(間隔)で、灰のかかり具合が違う
・土の中から出るミネラル等の色んな成分が、キラキラした色味になる可能性
と教えて下さいました。
窯に作品を入れる時は、様々な経験から計算されて配置されていると思いますが、それでも仕上がりは窯を開けてみないと分からない。
だから竹下様は、「5日間の薪焼成は自分で作っていても、窯の神様次第」と仰られています。
焼く事が陶芸の醍醐味。6・7年間、同じ形状で造っていても飽きる事はないと笑顔で仰っていました。



丸いコロンとしたフォルムは、「Embrace 抱きしめる」というタイトルです。
赤ちゃんを包むおくるみ。お腹の中で赤ちゃんを抱いている子宮の様なイメージでもあります。
「尊い私たちの命、その命の中で繰り広げられる喜怒哀楽、良い事も悪い事も全て大切なものとして抱きしめたい。という私の命への賛歌がテーマです」と述べられています。
新型コロナウイルスが世界中で広まり、命を落とす悲しいニュース、生活を脅かす情報が日々広まり、深刻な状況ですが、
この今の環境だからこそ、皆を励ましていける様、自身が挙げるテーマの信念に基づき、展示を開催して下さいました。

見にいらした方は、
「布が巻いてあるみたい」という声が一番多かったのですが、
円に置かれた部屋の展示では「集会している」「家族会議みたい」という感想もございました。
集会。家族。いずれもそこには命がある言葉。
作品のテーマにも「命」がある様に、優しい温もりが見にいらしたお客様に届いているのだと感じました。

今回の作品はアメリカの土で造られた作品です。海外で活躍をされていた竹下様なので、町家で展示されるのは初めてのこと。作品が、和の空間にどう映るかチャレンジでもありました。
「自己主張ではなく、作品による室礼の中で、潤いが見いだせたらいいな」と一番最初に仰られていた通り、
竹下様の作品がある事で、町家に心地いい空気が毎日流れているようでした。

今後は日本の土で造られるのでしょうか?
まだ帰国されて間がない事と、穴窯のこと。そしてアメリカより薪が高くて・・(-_-;)と、リアルな課題は避けられれませんが、
竹下桃子キーン様の、日本での新たなスタートを楽しみにしております。

昨今の大変な状況に、見にいらして下さった皆さま有難うございました。