展示・イベント

KYOEN 京縁: International Artists Inspired by Kyoto

概要
作家・主催者 【木版画、絵画】ダニエル • ケリー【墨絵】 マイケル・ホフマン / 仁科容子【水墨画】クリスティーン・フリント・サト【庭園デザイン】マーク・ピーター・キーン【写真】ウィリアム・コーリー/ロバート• ヴァン•クーズヴェルト/ジョン•アイナーセン/エヴェレット・ケネディ・ブラウン/シュヴァーブ トム【造形】キム ミョンヒ【絵画、イラスト、写真】ティエリ・ル。。。【茶道創作】リチャード・ミルグリム【デザイン・現代美術】アナザーマウンテンマン/又一山人【書家・作家】アレックス•カー【木版画】リチャード・スタイナー【和紙ペーパーワーク】サラ・ブレヤー【テキスタイル】ジョリー・ジョンソン【水墨画・版画】ブライアン・ウィリアムズ【絵画】ジョエル・スチュワート【デザイン】デニス•グイドーネ【生け花】マーク・ホーヴェイン
期間 2020年1月25日(土)~2月18日(火)
時間 9:00~18:00 (1月25日のみ17:00迄)
備考 木版画・絵画・墨絵・水墨画・庭園デザイン・写真・造形・イラスト・茶道道具・デザイン・現代美術・書家・版画・和紙ペーパーワーク・テキスタイル



レポート

英字雑誌Kyoto Journal 94号で取り上げられた「京都にインスピレーションを受けた外国人アーティスト」
今回の展示では、その本で紹介された作家達が集結し、作品を展示して下さいました。

 

出展作家や多くの関係者が集まった、オープニングパーティー。
ドリンク提供には、京都に蒸留所を構えたイギリス出身の創業者デービッド・クロールさんが手掛けた『季の美 京都ドライジン』がご協力下さいました。

  


展示期間中には作家が作品説明をする場や、「THE KYOTO CONNECTION」と題した英語による詩の朗読・歌などのイベント事も行われました。
この「THE KYOTO CONNECTION」は、京都に住む海外の方達が集まるコミュニティで、その昔は小さな子供も一緒に連れて、家族同士の交流場でもあった様です。
毎年行っていた活動もいつしか止まり、この京縁イベントにて15,16年ぶりに行われました。
親同士、友人との懐かしい再会。小さな子供だった彼が、大人になっての再会。
そこには暖かく笑顔に満ちた時間が流れていました。


同じ「京都」というコミュニティに属する日本人・外国人が「共演/協演」し相互理解を深めるきっかけづくりにしたいという想いのもと作り上げられた本展示。
その会場としてThe Terminal KYOTOを会場に、企画下さったKyoto Journalのジョン・アイナーセンとスタッフの皆様。そして出展下さった作家の皆様に感謝致します。
是非ご覧下さいませ。
■写真

   

ウィリアム・コリーは、バンケットカメラという蛇腹式の大判カメラを愛用。超特大の大判フィルムは情報量が大きいので、数メートルに及ぶ大きさに引き伸ばしてもデジタルカメラでは表せない細かい葉一枚一枚をはっきりと、写し出す事が出来ます。
三千院の写真は今回布におとしています。光と影、奥行ある緑の立体感。
2008年 残念ながら闘病生活の後に逝去されましたが、京都に魅せられ33年に渡り毎年京都に来日して撮り収められた作品は、今も圧倒的な臨場感を見せ、多くの方に感動を与えています。

ジョン・アイナーセン/エヴァレット・ケネディ・ブラウン/ロバート・ヴァン・クーズヴェルト


■デザイン・現代美術

 

縁側の作品 アナザーマウンテンマン/又一山人は、主に香港と京都を行き来し、制作活動をされています。
準備期間中に町家の奥庭でずっと写真を撮られていました。彼が撮っていたのは、壁に映る木々の影
その写真を日本の古い書物の様な形で制作し、縁側に置く事で、奥庭と重ね合わせてご覧頂きました。
お客様の中には、ずっとその作品の前に座り、一目惚れかのように長い時間作品を眺め過ごされていたお若い女性が印象的です。


    
イタリア人のデニス・グイドーネは、主にイタリア・東京・京都を行き来し、建築とデザインの分野で制作活動をされています。
今回はランプと、花器をデザインした作品を出展。
自然光が射し、綺麗な色を発するガラスの花器は、日本で出会った水石から。そして優しい灯りと、丸いフォルムのガラス製のランプ。こちらは提灯からインスピレーションを受けられました。


■墨絵

   

日本で墨を学び、40年間制作活動をされているクリスティーン・フリント・サト。


 

木版画や絵画、墨絵。多才な芸術家ダニエル・ケリー。
額縁の様に付けられた、いくつものオブジェ。実はお仏壇の装飾。よく見るとお位牌も見つけられます。ガラクタだよ。と言っていた彼が印象的です。



マイケル・ホフマンの墨絵と、書は仁科容子。


■工芸


日本文化、生活において燃料だけでなく、空気や水の浄化、土壌改良い利用されてきた炭。作家ハカマは、素材に竹炭を用い、独自の方法で竹炭をプレスし、焼いて磨き、新たな造形として生み出した作品です。
マーク・ホーヴェインさんによる生け花は、会期が進むにつれ花が咲いた演出も。


■版画


1970年に来日したリチャード・スタイナーは現在80歳を超えています。
たっぷり時間がある機会に、生け花や書道を学ぼうとされますが、木版画と出会い、彫る楽しみを見つけられました。広島で2年間、その後京都に移り住んでからも10年間学ばれたそうです。
宗教的なテーマや、ある作品のパロディ化したもの。バラエティに富んだ作品を制作。


こちらもダニエル・ケリーの作品です。

絵画かと思える鯉。その素晴らしい木版画技術に圧巻です。


■書


書家、作家でもあるアレックス・カー。
町家の保存や、観光問題にも積極的に活動をされています。


■テキスタイル


柔らかく温かみある羊毛には、和紙や墨を用いるなど、羊毛の可能性を追求した作品展開を見せるフェルト作家ジョリー・ジョンソン。


■絵画


ブライアン・ウィリアムは、湾曲したパネルに書く「局面絵画」を発案。
約50年前に来日し、日本の自然・、風土にみせられ、今は滋賀を拠点に活動されています。展示作品にある様なお家で暮らしていらっしゃるそうですよ。
日本の美を紹介すると共に、活動的に環境問題にも取り組んでおられます。


 
ジョエル・スチュアートの水彩画は、日本的要素と西洋的要素が対になった屏風作品。
例えば、オランダのチューリップと、北大路 魯山人の花瓶が対になっています。
それは作家自身の人生 半分が京都で過ごした時間であり、半分は海外含む別の場所であることの表れでもあります。
屏風を作るのに、1枚1枚単体の絵画の中から、どの組み合わせにしようかと自由に選び考える時間は、とても楽しいと仰っていました。


画家・イラストレーターの作家ティエリ・ル…。
普段生活をしている中からヒントを得る事があるそうで、常に頭の中ではそういったヒントにアンテナをはっているそうです。
ユーモア溢れる多くのデザインは、何だかハッピーな気持ちにもなります。


木版画、墨絵に続き、こちらもダニエル・ケリーの作品


■陶芸


40年に渡り制作を続けている陶芸家リチャード・ミルグリムの茶道具と花器。


■庭園デザイン


マーク・ピーター・キーンは20年近く京都で日本庭園のデザインを学んだ後、ニューヨークを拠点に海外においても庭園デザインで活躍。昨年秋、日本に帰って来られました。
今回、苔や丸太などを京都の西山から見つけて運び入れられました。
人間社会を表現した車。文明の力強いシンボルでもあります。そんな美しい車も、いつかは錆びてやがて鉄粉に戻ります。
坪庭がマーク・ピーター・キーンの手にかかり、現代文明の無情(はなかさ)が表現されました。
これからは、こういった新しい形(今の形)を表す枯山水を表現していきたいと仰せでした。

土間にはニューヨークの地盤から、50年間ねむっていたビートルの部品(ヘッドライト)を掘り起こし、オブジェへ。
また、茶室には陶芸作品も展示。
火の熱が弱かったのか原因は定かではないですが、穴窯の中で作品が花の様に広がり、それは「アースフラワー」と題されました。


■和紙


茶室 元々は絵を描いていたキム・ミョンヒ。
言葉の壁から自分を見失いそうな時に、ある彫刻家が石膏で作家自身の顔を作ってくれたそうです。
「自分探し」がきっかけとなり、絵を描いてきたキムは、紙を使ったアレンジを加え、今の作風・活動に繋がっていきます。
顔に石膏を塗り、型をとる。会話は勿論、信頼がないと出来ない作業です→その型の内側に和紙を1枚→乾かして2枚→3枚・・・5枚。
国によって石膏の質が違うので、乾かない苦労もあるそうですが、日本の石膏は質がいいそうです。
最初はアートとしてのスタートでしたが、今はコミュニティとなり、ピースマスク活動を続けて今年でちょうど20年。
2500人以上の顔を制作され、同じ顔はない。自分の顔って知らないもので「これが私の顔?!」と驚かれるそうです。
キムさんは「顔には自分の心が反映します。たまには鏡を見て微笑んで下さい。1つしかない顔は美しい。大事にして下さい」と仰っていました。



日本で唐紙と出会ったサラ・ブレヤー。そこから彼女のペーパーワークが始まります。
二階天高の間 正面の作品は、ちょうど襖と同じサイズの作品。和紙には蓄光顔料を使用し、暗闇で光るSarah Brayerの世界観が広がります。


■写真/インスタレーション

 
防空壕ではシュヴァーブ・トムと、ペ・サンスンのインスタレーション。
ペ・サンスンは、3種類の糸(韓国の糸、京都の糸、錦糸)を組み合わせた写真「シャンデリア」シリーズ7点から、今回3点をエンジニアにより映像化。
写真がの一部が音と合わせて、心臓の様にドクドクと動きます。
音は妊娠中の母の脈音と、お腹にいる赤ちゃんの脈音が混ざり合わせたもの(病院から提供してもらった、実際の脈音だそうです)


■生け花
展示に添えられた生け花は、すべてマーク・ホーヴェインさんによる演出です。