逸 品

土井宏友

漆芸家

 

1987年 嵯峨美短大(日本画)卒業

第19回日展(日本画)入選

文化財修復の仕事に従事(~1992)

1991年 京都美術展(平面1)優秀賞

1996年 石川県立輪島漆芸研修所 卒業

京都に仕事場を移す

1997年~ギャラリーを中心に個展、グループ展 多数

 

私は選ばれたのだ。選ばれたのだから大切にしていきたい。

 

土井さんは大学で日本画を専攻し友禅の描き手から漆芸家になったという異色の経歴の持ち主です。

 

漆は一般的に手が荒れやすく扱うのも大変な素材として知られています。ですが、土井さんは「自分はそんなことが全くない」と笑っておっしゃります。「素材が作り手を選ぶ」という言葉がありますが、その事実は土井さんに漆芸家としての自信と責任、そして溢れんばかりの漆への愛情を与えます。

 

受け継がれてきた伝統技法を大切にしながら新しい試みに挑戦する土井さんは、作品作りを木地製作からだけではなく、それを削る刃物から行うという入れ込みよう。全工程をすべて自身でされているからこそ素敵な作品が生まれてくるのだと教えられるようです。

 

丼鉢や旅茶碗は木や漆で作ったほうが軽くて、外の熱を通さず、かつ、保湿性があり割れにくい。「奇をてらったものではなく、必要だから作る」という言葉には、用と美を兼ね備え、その素材の力を最大限に発揮する作り手の矜持があります。

 

陶器ではできない漆器の世界。器の究極は使えなくなるほどに使い切ることだと言い切る作家の情熱。使えば使うほどに味わい深くなるこの世界を皆様にもお届けしたいと思っています。