展示・イベント

室礼 SHITSURAI -Offerings XII – PAUSE

概要
作家・主催者 【写真】ジョン・アイナーセン /レイン・ディコ/ゲール・グレン/トーマス・フレケンステイン/エド・ヘッカーマン/長瀬光枝&ベアント・シェルホルン/シュヴァーブ・トム/カタリナ・プレッテ/フォスター・ミックリ&イザベル・オリヴィエ/ヒリシャ・メヘタ/マイケル・ウッド&ジュリー・デュボース/鈴鹿芳康/林智子/サイモン・ジェイムズ・フレンチ
【工芸】中川周士/臼井浩明/小田切健一郎/小田切裕美/飯田武彦/山本雄次/やのさちこ/大西巧/古良慕
期間 2026年4月18日(土)ー5月17日(日)
時間 9:30-18:00

レポート

約一ヶ月にわたり、多くの方に町家へ足を運んでいただき、本当にありがとうございました。
室礼展は、KYOTO GRAPHIEやKG+の会期に合わせて開催している展示ですが、“写真展”とは少し異なる形を大切にしています。
もちろん軸にあるのは写真ですが、そこに工芸を加え、京町家という空間全体をひとつの展示として、しつらえていくことを12回にわたり続けています。
今回は17名の写真作家と、9名の工芸作家が参加。
KG+を毎年のように楽しみに巡られてる方にも「ここは外せない会場」と、お声を聞くことが多くなりました。

今年のサブタイトルは“PAUSE”
直訳すると一時停止ですが、単に止まるだけの意味合いではなく、次へ進むためにふと立ち止まること。
あらためて動き出すために、時間や心に余白を持つこと。
そのための“間”のようなものの大切さをコンセプトに進めて参りました。

今年の写真作品では「Miksang(ミクサン)」という考えをもった作家が多く参加していたことが印象的です。
“Good Eye”
純粋な目で世界を見ること。
思い込みや先入観をのぞき、目の前にあるものを、そのまま見つめてみる。
それに基づいた写真を撮るワークショップも、2人の作家(ジョン・アイナーセン/エド・ヘッカーマン)から開かれました。

工芸作品では、伝統的な技術を受け継ぎながら、新しい表現に挑戦する作家たち。
木造建築の町家の空間には、木工芸の存在が自然と溶け込み、作品だけではない“しつらえ”として空気をつくっていたように思います。

土間で皆さまを迎えたのは、写真家・鈴鹿芳康による「ハンド・シリーズ」でした。
並ぶ4点の写真は、左からキリスト教、仏教、神道、イスラム教における祈りの手を写したもの。
背景や文化は違っていても、「祈る」という行為は、どの手にも静かな力強さがありました。
作品タイトルは「世界平和」
鈴鹿さんはこのシリーズについて、次のように語っています。
「様々な宗教家が世界の平和を祈るときの手の形を撮影しました。ここでは意図的に、異なる民族、国、宗教を選びました。なぜなら世界平和を祈るということにおいて、私たちはみな一つだからです。」

祈りのかたちは違っていても、そこに込められた願いはきっと同じ。
難しく考えなくても、ただ手のかたちを見ているだけで何かが伝わってくる。
そのような作品でした。

また、二階茶室で展示されたフォスター・ミックリ&イザベル・オリヴィエのユニット「Black Cat Day Dream」は映像作品を無音で流し、
そっと畳に置かれた詩集を自然光だけの空間で読んで頂いて、一日の光の移ろいと共に静かな時間が流れていました。

室礼展では「こう見せたい」というよりも、「どう在りたいか」を大切にしている展示だと思っています。
決してインパクトが強い空間をつくることではなく、写真だけでもない。工芸だけでもない。作品単体だけでもない。
先人の知恵がつまった風通しがよく、自然光が入る京町家の空気を尊重しながら、写真も工芸も自然にそこに在ること。
それらが重なり合って、ひとつの“室礼”になっていく。12回続けても、それは簡単なことではないと感じます。
今年も作家の皆さまと共につくることができ、幸せであります。

KG+のマップを片手に、多くの写真展を巡られた方もいらっしゃったと思います。
その中でTHE TERMINAL KYOTOでは、写真と工芸が織りなす空間そのものを、ゆっくり味わっていただき、皆さまにとって小さな“Pause”となっていたなら嬉しく思います。