展示・イベント

眼福 GAMPUKU 展

概要
作家・主催者 作家:西村大樹、大黒貴之、半澤友美、増田将大、ロビンソン愛子
企画:Art agent Kaïchi
協力:MARUEIDO JAPAN
期間 2021年7月3日(土)~7月24日(土)
時間 9:00~18:00 ※最終日16時迄
備考 作家在廊予定日
  最終日24日(土) 西村大樹、大黒貴之
 ※変更の可能性もございます。

レポート

2019年夏、東京のファインアートギャラリーMARUEIDO JAPANにてʼʼ眼福GAMPUKUʼʼ展が開催されました。
今回はArt agent Kaïchさんとのご縁から、MARUEIDO JAPAN協力の元、親交の深いアーティスト5名による新しい眼福展が町家で繰り広げられました。
東京で紹介されている作品を、京都(関西)の方にも是非見て欲しい。
そして、⼤きく環境が揺れ動いた世の中で、今夏の眼の喜びとして優しく届き、作品と対峙する時間が安らぎの一時になる様にと、想いが込められた展示です。

【眼福】〔名〕素晴らしいもの、珍しいものなどを見ることのできた幸せ。


■増⽥将太
1991年静岡県出身
2014年東京藝術大学 美術学部 絵画科油画専攻 卒業
2017年東京藝術大学 大学院美術研究科 油画・技法材料研究室 修了
2021年 東京藝術大学 大学院美術研究科 博士後期課程 修了

シルクスクリーンの作品で「一つの景色に見えても時間が流れている」をテーマにされています。
作家自身がアンティークショップで見つけた額をカメラで撮影し、それをプロジェクターで何回にも重ねる事で出来た画面。
持ち主によって額に入る作品は変わり、そういった額の歴史、時間制を表現されています。
町家も昔は呉服商でしたが、今はThe Terminal KYOTOとして喫茶やアート展示で今があります。
昭和7年の町家自体を、額と見立てたなら、建物の中ではどんどん動きに変化があり、息づいている時間(歴史)があります。それが作品とリンクし、町家にピッタリだと選ばれました。


■⻄村⼤樹
1985大阪府生まれ
2011大阪芸術大学大学院芸術研究科博士課程前期修了

絵画と、写真作品。
オイルペインティングを書く為に、まずは創案として写真作品を作られます。
自ら撮った写真に脱色、擦る、削るなどハードなダメージを与え、それをもう一度撮影して薄い和紙に落としこみます。
印刷した和紙と、別紙土台との間に細長く切った和紙を挟む事で透過され、絵の具では表せない柔らかな光を形にしています。
所々に線香で穴を開け、アルミのプレートに乗せて完成された作品です。
環境問題に関心を持つ西村さんには、そのアルミにも意味があります。
アルミは私達の生活に一番身近であり、環境問題に大きく影響を与えている物質。
線香で穴を開ける行為は浄化のイメージもありますが、穴からはアルミが顔を出しており、美しいはずの景色の中に、見えていない環境問題を視覚化しています。

今回実はオープンにはしていなかったのですが、防空壕に植物を使った実験的作品がありました。
西村さんは絵を描く時も常に環境問題がテーマにあり、
“私たちは自然を守ろうとしていますが、すでに守る自然は絶滅しており、守るのではなく、ここから復元していかないといけない。“というのが、作家の思想です。

太陽がない状態でも同じエネルギーが木に与えられる、“太陽ライト“を使用。
オゾン層が破壊され、きっと太陽エネルギーは違った光になって届いている。
人工的な空間で復元を図る今の世の中に、必要な物を体現化しています。


■⼤⿊貴之
1976年 滋賀県生まれ 1999年 大阪芸術大学芸術学部美術学 科 卒業
2001年 大阪芸術大学大学院芸術制作 研究科造形表現II(彫刻) 修了
2001-03年 ドイツ、ベルリンに滞在
2011-16年 ドイツ、ブランデンブル ク州滞在

ドイツに長く住んでおられ、2016年からは滋賀で制作をされています。
彫刻、ドローイングは自然の中にある反復、増殖をインスピレーションにして生まれています。
この夏、町家で大国さんの個展を行います。
8月の個展では、二階縁側に飾られたドローイングと似たビジュアルで、約2mほどある大型作品が展示される予定ですので、是非お楽しみになさって下さい。


■ロビンソン愛⼦
1993年クリストチャーチ(ニュージーランド)出身
2014年Elam School of Fine Arts, University of Auckland(ニュージーランド) 卒業
2020年 東京藝術大学大学院 美術研究科 修了

現在は海外にお住まいですが、展示作品は東京留学中に制作された銅版画です。
日本とのハーフであるロビンソンさんは、自分のアイデンティティである日本の事を調べ、春画をテーマに制作し始めます。
顔の代わりに植物を用い、背景にも細かく描き出された多くの植物。東京のビルも見受けられ、現代春画と呼ばれています。
春画なのでエロティックな表現はありますが、その男女の恋が見え隠れする絶妙なバランス、繊細な線使いにある生命力。
現在も春画をテーマに活動されていますが、この銅版画シリーズは現在制作されてない様で少し寂しくも思います。
国内ではMARUEIDO JAPANのみで各作品2、3枚づつしかお取り扱いがなく、見にいらした方々からも本当にご好評でした。


■半澤友美
1988年生まれ。
2010年女子美術大学立体アート学科卒業。
東京都在住

素材は木材パルプ。
彫刻は一般的に石・木・金属・粘土などを使うイメージがありますが、通われていた大学では紙繊維というジャンルがあり、紙を専攻されていました。
とっても小柄で華奢な半澤さんは腕力が強くはないので、ソフトスカルプチャや、廃版系の紙を使い、彫刻活動していこうと思われました。

作品は、金属で構造を作った物を紙すきの技法を応用して、水の中から救い上げる時に繊維が絡まることで、いつの間にか偶然的に出来た形状。
水から救う、かける事を何回も繰り返し、だんだんと繊維が肉付いていく間にペインティングを入れています。
そういった過程が面白いと仰っておられました。
じわじわと肉付き積み重なる、物質に引っかかって取れなくなる、周りの影響から物が出来ていく模様を、
私達が生きてきた時間や経験に置き換えたなら、過去の自分をある程度見つめる事、今の自分をきちんと見つめ直す事が出来る。
その様な想いを、紙を使い表現されています。


⻄村⼤樹さんは、会場の下見で防空壕を見た時、絵画以外の方法で初めて思想を表現するインスタレーションが浮かんだそうです。
制作において「成長しなきゃと思いつつ、何も出来なかったのが、こうやって新しい創作が降ってくるんだな」という言葉を後に聞きました。
また、搬入時に初めて顔を合わす作家同士、初めて和の空間で作品を置く作家さんも数名おられ、
町家に来て頂いた事で初めてのインスピレーション、出会い、経験が生まれた事を嬉しく思います。
展示を見にいらした皆様にも、きっと作品を通して眼福な一時と素晴らしい出会いがあられたと思います。